【初心者必見】REIT(不動産投資信託)とは?メリット・デメリットから始め方まで徹底解説

「不動産投資に興味はあるけれど、まとまった資金がないし、管理も大変そう…」そんな風に感じている方も多いのではないでしょうか。実は、少額から手軽に不動産投資を始められる方法として「REIT(不動産投資信託)」という方法がございます。

この記事では、不動産投資信託(REIT)とは何か、その仕組みやメリット・デメリット、他の不動産投資との違い、そしてREITがどんな方におすすめなのかを分かりやすく解説します。この記事を読み終える頃には、REITがご自身の資産運用の一つの選択肢として具体的に検討できるようになるでしょう。

REITは、不動産投資のハードルをぐっと下げてくれる魅力的な金融商品ですが、正しく理解することが大切です。

目次

REIT(不動産投資信託)とは?基本的な仕組みをわかりやすく解説

まず、REITがどのような金融商品なのか、基本的な仕組みから見ていきましょう。

REIT(リート)の語源と定義:「Real Estate Investment Trust」の略

REITは、「Real Estate Investment Trust」の頭文字をとったもので、日本語では「不動産投資信託」と訳されます。簡単に言うと、多くの投資家から資金を集め、その資金で不動産への投資を行い、そこから得られる賃料収入や不動産の売買益を投資家に分配する仕組みの金融商品です。

投資家は、REITを通じて間接的に様々な不動産のオーナーの一人となり、不動産から生じる収益の分配を受けることができます。

REITの仕組み:投資家から資金を集め、不動産に投資し、得られた賃料収入や売却益を投資家に分配する仕組みを解説

REITの仕組みは、主に「投資法人(REIT法人)」、「運用会社」、「資産管理会社」という3つの組織が関わることで成り立っています。

投資法人(REIT法人)の役割

投資法人は、投資家から資金を集める窓口であり、不動産などの資産を保有する主体です。投資証券を発行し、投資家はこれを購入することでREITに投資します。投資法人は、実質的な運用業務や資産の保管業務は行わず、これらの業務を外部の専門機関に委託します。日本のREIT(J-REIT)は、会社型投資信託に分類され、その多くは東京証券取引所に上場しています。

運用会社の役割

運用会社は、投資法人から委託を受け、集めた資金をどの不動産に投資するかを選定し、売買や賃貸経営といった実際の不動産運用戦略を立案・実行します。不動産市場の動向分析、物件の収益性評価など、専門的な知識と経験が求められる重要な役割を担います。投資成果を最大化することが運用会社の使命です。

資産管理会社の役割

資産管理会社は、投資法人が保有する不動産や有価証券などの資産を保管・管理する役割を担います。信託銀行などがこの役割を担うことが一般的です。投資家の資産を安全に管理し、透明性を確保する上で欠かせない存在です。

このように、REITは専門家が不動産の選定から運用、管理までを行うため、投資家自身が煩雑な不動産管理業務に携わる必要がないのが特徴です。

REITの種類:投資対象による分類

REITは、投資する不動産の種類によっていくつかのタイプに分類されます。それぞれ特徴やリスク・リターン特性が異なるため、自分の投資方針に合ったものを選ぶことが大切です。

オフィスビル特化型REIT

主に都市部のオフィスビルに投資するREITです。景気動向や企業の業績に収益が左右されやすい傾向がありますが、都心の一等地の物件であれば安定した賃料収入が期待できます。

商業施設特化型REIT

ショッピングセンターや百貨店、専門店ビルなどに投資するREITです。テナントの売上や集客力が収益に影響し、消費動向や地域の経済状況によってパフォーマンスが変動します。

住居特化型REIT

賃貸マンションやアパートなどの居住用施設に投資するREITです。一般的に景気変動の影響を受けにくく、比較的安定した賃料収入が見込めますが、人口動態やエリアの需給バランスに左右されます。

物流施設特化型REIT

倉庫や配送センターなどの物流施設に投資するREITです。EC市場の拡大などを背景に近年注目度が高まっています。テナントとなる企業の業種や契約期間などが安定性に影響します。

ヘルスケア施設特化型REIT

有料老人ホームや病院、サービス付き高齢者向け住宅などのヘルスケア関連施設に投資するREITです。高齢化社会の進展に伴い、中長期的な成長が期待される分野ですが、制度変更などの影響を受ける可能性もあります。

ホテル特化型REIT

ビジネスホテルやリゾートホテルなどに投資するREITです。観光客の増減や旅行業界の動向、季節変動などの影響を大きく受けます。景気回復局面やインバウンド需要の増加時には高い収益性が期待できます。

複合型REIT・総合型REIT

上記の複数の用途の不動産に分散投資するタイプを複合型REIT、さらに広範な種類の不動産に投資するタイプを総合型REITと呼びます。特定の用途に特化するよりもリスク分散効果が期待できます。

J-REIT(ジェイリート)とは?日本版不動産投資信託の特徴

J-REIT(ジェイリート)とは、日本の不動産投資信託のことです。米国のREIT制度を参考に、2001年に東京証券取引所に初めて上場しました。J-REITの大きな特徴は、利益の大部分を投資家に分配することで、法人税が実質的に免除される仕組み(導管性要件)があることです。これにより、投資家は効率的に収益を得やすくなっています。

海外のREITと比較すると、J-REITは比較的身近な日本の不動産に投資しているため、投資対象のイメージが湧きやすいというメリットがあります。また、情報開示の基準が日本の法律や取引所の規則に基づいているため、日本人投資家にとっては情報収集がしやすい環境です。一方、海外REITは、日本国内の不動産だけでなく、世界各国の不動産に分散投資できる点が魅力ですが、為替リスクや各国の法制度・カントリーリスクなども考慮する必要があります。

REITのメリット:賢い資産運用への第一歩

REITには、不動産投資のハードルを下げ、多くの人にとって取り組みやすいものにする様々なメリットがあります。

メリット1:少額から始められる手軽さ(数万円程度から投資可能なREITも)

現物の不動産投資では、物件購入のために数千万円から数億円といった多額の自己資金やローンが必要になることが一般的です。しかし、REITであれば、証券取引所に上場している銘柄なら数万円から数十万円程度で購入できるものが多く、気軽に不動産への投資を始めることができます。これにより、これまで資金面で不動産投資を諦めていた方でも、資産形成の選択肢として検討しやすくなります。

メリット2:分散投資によるリスク軽減効果(複数の物件・地域への投資)

REITは、一つの銘柄で複数の不動産物件に投資しています。例えば、あるREITが複数のオフィスビルや商業施設、マンションなどを保有している場合、投資家はそのREITを購入するだけで、自動的に複数の物件・地域に分散投資していることになります。これにより、特定の物件で空室が発生したり、特定の地域の不動産価値が下落したりしても、他の物件や地域からの収益でカバーできる可能性があり、リスクを軽減する効果が期待できます。

もし一つのオフィスビルに特化して投資していた場合、そのビルで大規模な空室が発生すれば収益に大きな打撃となりますが、REITであれば複数の種類の不動産に分散しているため、特定の不動産の影響を受けにくいです。

メリット3:専門家による不動産運用(物件選定・管理の手間いらず)

不動産投資で収益を上げるためには、優良な物件を選定する目利きや、購入後の物件管理、テナントとの交渉など、専門的な知識やノウハウ、そして多くの手間と時間が必要です。REITでは、これらの煩雑な業務をすべて不動産のプロフェッショナルである運用会社が行います。投資家は、難しい運用判断や管理業務に頭を悩ませる必要がなく、専門家チームに運用を任せることができます。

メリット4:高い換金性と流動性(証券取引所での売買のしやすさ)

現物の不動産は、売却しようと思ってもすぐに買い手が見つかるとは限らず、現金化するまでに時間がかかる場合があります。また、売却価格も交渉次第で大きく変動することがあります。一方、上場しているREITは、株式と同様に証券取引所で日々売買されています。そのため、取引時間中であれば、市場価格で比較的容易に売買することが可能です。この換金性の高さは、急に資金が必要になった場合や、投資戦略を見直したい場合に有利に働きます。

メリット5:比較的安定した分配金収入が期待できる(賃料収入が主な原資)

REITの主な収益源は、保有する不動産からの賃料収入です。賃料収入は、景気変動の影響を受けにくい比較的安定したキャッシュフローを生み出す傾向があります。J-REITは、利益の90%超を分配するなどの一定の条件を満たすことで法人税が実質的に免除されるため、得られた収益の多くが投資家への分配金として還元されやすい仕組みになっています[3]。そのため、定期的なインカムゲイン(分配金収入)を期待する投資家にとって魅力的な選択肢となります。

メリット6:インフレに強いとされる資産(不動産価値・賃料の上昇期待)

一般的に、インフレ(物価上昇)が起こると、現金の価値は相対的に目減りしてしまいます。これに対し、不動産はインフレに強い資産と言われています。インフレ時には、不動産の資産価値そのものが上昇する傾向があり、また、物価上昇に伴って賃料も上昇する可能性があるためです。REITは不動産に投資する商品であるため、インフレヘッジ(インフレによる資産価値の目減りを回避する手段)としての効果も期待できます。

メリット7:透明性が高い(情報開示の義務)

上場しているREITは、金融商品取引法や証券取引所の規則に基づき、投資判断に必要な情報を投資家に対して適時かつ適切に開示することが義務付けられています。具体的には、決算情報、保有物件の状況、運用方針などが定期的に公表されます。これにより、投資家はREITの運用状況や財務状態を把握しやすく、透明性の高い環境で投資判断を行うことができます。

REITのデメリットと注意点:始める前に知っておきたいこと

多くのメリットがある一方で、REITには注意すべきデメリットやリスクも存在します。投資を始める前にこれらを十分に理解しておくことが重要です。

デメリット1:元本保証がない投資リスク(市場価格の変動)

REITは預貯金とは異なり、元本が保証されている金融商品ではありません。REITの価格(投資口価格)は、株式市場や不動産市場の状況、金利動向、経済情勢など様々な要因によって変動します。購入した価格よりも値下がりし、損失を被る可能性があることを理解しておく必要があります。

デメリット2:不動産市場や金利変動の影響を受ける

REITの収益は、主に保有不動産からの賃料収入や売却益に依存するため、不動産市場全体の動向から大きな影響を受けます。不動産市況が悪化すれば、空室率の上昇や賃料の下落、不動産価格の下落などにより、REITの収益や価格も下がる可能性があります。

また、金利の変動もREITの価格に影響を与える重要な要素です。一般的に、金利が上昇すると、REITの相対的な魅力が低下したり、REITが不動産取得のために行う借入金の金利負担が増加したりすることから、REITの価格にはマイナスに作用する傾向があります。

デメリット3:投資法人の倒産リスク・上場廃止リスク

REITを運営する投資法人が経営破綻(倒産)するリスクはゼロではありません。万が一、投資法人が倒産した場合には、投資した資金が戻ってこない可能性や、投資口価格が大幅に下落する可能性があります。また、運用成績の悪化や財務状況の著しい悪化などにより、証券取引所の上場基準を満たせなくなり、上場廃止となるリスクもあります。上場廃止になると、市場での売買が困難になり、換金性が著しく低下します。

デメリット4:分配金が減少する可能性(経済状況や物件の収益状況による)

REITの魅力の一つである分配金ですが、常に一定額が保証されているわけではありません。経済状況の悪化、保有物件の空室率の上昇、賃料の引き下げ、予期せぬ修繕費用の発生などにより、投資法人の収益が悪化すれば、投資家へ支払われる分配金が減少したり、支払われなくなったりする可能性があります。

デメリット5:自然災害や不動産特有のリスク(現物不動産投資ほどではないが影響あり)

REITは複数の不動産に分散投資していますが、地震や台風、水害といった自然災害によって保有物件が被害を受けた場合、修繕費用が発生したり、賃料収入が減少したりする可能性があります。これにより、REITの収益や価格にマイナスの影響が出ることが考えられます。火災保険や地震保険に加入している場合でも、全ての損害がカバーされるとは限りません。また、不動産特有のリスクとして、物件の老朽化や周辺環境の変化、法規制の変更なども間接的に影響する可能性があります。

REITを選ぶ上での注意点

REITに投資する際には、単に利回りが高いという理由だけで選ぶのではなく、そのREITがどのような不動産に投資しているのか(投資対象)、どのような運用方針を持っているのか、財務状況は健全かなどを総合的に確認することが重要です。また、自身の投資目的やリスク許容度を考慮し、分散投資を心がけることも大切です。後述する「失敗しないためのREITの選び方とポイント」で詳しく解説します。

REITと他の不動産投資との徹底比較

REITは不動産に投資する一つの方法ですが、他にも様々な不動産投資の手法があります。ここでは、代表的な不動産投資である「現物不動産投資」や「不動産小口化商品」との違い、そして「株式投資」や「債券投資」といった他の金融商品との違いを比較し、REITの特徴をより明確にしていきます。

現物不動産投資との違い

現物不動産投資とは、マンションやアパート、戸建て、土地などを実際に購入し、賃貸に出して家賃収入を得たり、売却して売却益を得たりする投資方法です。

初期費用

現物不動産投資の場合、物件価格の全額または一部の頭金、登記費用、不動産取得税、仲介手数料など、多額の初期費用が必要です。一方、REITは数万円から数十万円程度と、比較的少額から投資を始めることができます。

管理の手間

現物不動産投資では、入居者募集、賃料回収、物件の維持管理、クレーム対応など、煩雑な管理業務が発生します。これらを管理会社に委託することもできますが、その分の費用がかかります。REITでは、これらの管理業務はすべて運用の専門家が行うため、投資家自身に手間はかかりません。

流動性

現物不動産は、売却しようとしてもすぐに買い手が見つかるとは限らず、現金化に時間がかかる場合があります。REITは証券取引所に上場しているため、株式と同様に市場で比較的容易に売買でき、流動性が高いと言えます。

リスク分散

現物不動産投資では、通常、特定の物件に資金が集中しがちです。そのため、その物件に空室が出たり、災害で被害を受けたりすると、大きな影響を受けます。REITは、一つの銘柄で複数の物件に投資しているため、自然と分散投資が行われ、リスクを軽減する効果が期待できます。

REITの優位性と劣位性

上記をまとめると、REITは現物不動産投資に比べて、少額から始められ、管理の手間がなく、流動性が高く、分散投資が容易であるという優位性があります。一方で、現物不動産投資のように金融機関からの融資を利用してレバレッジを効かせた投資(少ない自己資金で大きなリターンを狙う投資)はできません。また、自分で物件を選んだり、経営に直接関与したりする自由度もありません。

不動産小口化商品との違い

不動産小口化商品とは、特定の不動産に対する投資を小口化し、複数の投資家から資金を集めて運用する商品です。契約形態によって「匿名組合型」や「任意組合型」などがあります。

匿名組合型、任意組合型との比較

匿名組合型は、投資家が事業者に出資し、事業者はその資金で不動産事業を行い、得られた利益を投資家に分配する形態です。投資家は事業の運営には直接関与しません。任意組合型は、複数の投資家が共同で不動産を所有(または賃借)し、共同で事業を行う形態で、より直接的に不動産に関与する側面があります。

流動性

一般的に、不動産小口化商品はREITに比べて流動性が低い傾向があります。中途解約ができなかったり、できても手数料が高かったり、譲渡が制限されていたりする場合があります。上場REITは市場でいつでも売買可能です。

投資対象の透明性

不動産小口化商品は、投資対象となる物件が具体的に特定されている場合が多いです。一方、REITは複数の物件に投資しており、個々の物件情報は開示されますが、ポートフォリオ全体としての運用になります。

リスクの観点からREITと比較

不動産小口化商品は、投資対象が特定の物件に集中する傾向があるため、その物件の状況に収益が大きく左右されます。REITは多数の物件に分散投資することで、この種のリスクを低減しています。また、事業者の信用リスクも考慮する必要があります。

株式投資や債券投資との違い

REITは、株式や債券と並ぶ主要な資産クラスの一つとして位置づけられます。

値動きの特性

REITの価格は、不動産市況や金利動向の影響を強く受ける一方、株式市場全体の動きとも一定の相関性があります。一般的に、株式よりは値動きがマイルドで、債券よりは値動きが大きいとされるミドルリスク・ミドルリターンの資産と位置付けられることが多いです。ただし、銘柄や市場環境によって値動きの特性は異なります。

収益源(インカムゲイン、キャピタルゲイン)の違い

REITの主な収益源は、不動産からの賃料収入を原資とする安定的な分配金(インカムゲイン)です。加えて、市場で売買することによる売却益(キャピタルゲイン)も期待できます。株式投資も配当金(インカムゲイン)と売買益(キャピタルゲイン)が収益源ですが、一般的にREITの方がインカムゲインの比重が高い傾向があります。債券は、定期的な利子(インカムゲイン)と満期時の償還金、または途中売却による売買益(キャピタルゲイン)が収益源となります。

ポートフォリオにおけるREITの位置づけ

REITは、株式や債券とは異なる値動きをすることがあるため、これらを組み合わせて保有するポートフォリオにREITを組み入れることで、リスク分散効果を高めることが期待できます。特に、インフレに強いとされる特性から、インフレヘッジ資産としての役割も担うことができます。

あなたはどっち?REITがおすすめな人の特徴

REITは多くのメリットを持つ金融商品ですが、誰にでも最適な投資対象というわけではありません。ご自身の投資目的やライフスタイル、リスク許容度などを考慮して、REITが自分に合っているかどうかを見極めることが大切です。

少額から不動産投資を始めてみたい人

「不動産に投資してみたいけれど、いきなり大きな金額を投じるのは不安」「まずは手軽に不動産投資の経験を積んでみたい」と考えている方にとって、REITは有力な選択肢です。数万円程度から購入できる銘柄もあるため、無理のない範囲で不動産への投資をスタートできます。

不動産運用の手間や時間をかけたくない人(忙しい会社員など)

現物不動産投資には、物件探しから購入手続き、入居者管理、建物のメンテナンスなど、多くの手間と時間がかかります。REITであれば、これらの運用はすべて専門家が行うため、投資家自身が煩雑な業務に追われることはありません。日中忙しい会社員の方や、不動産運用の専門知識がない方でも、気軽に不動産オーナーになることができます。

分散投資でリスクを抑えたいと考えている人

「卵は一つのカゴに盛るな」という投資の格言があるように、資産運用においては分散投資がリスク管理の基本です。REITは、一つの銘柄で複数の不動産物件や地域に投資しているため、自然と分散投資の効果が得られます。特定の物件や地域のリスクを軽減し、より安定的な運用を目指したい方に向いています。

安定的なインカムゲイン(分配金)を期待する人

REITの主な収益源は、保有不動産からの賃料収入であり、比較的安定した分配金が期待できます。定期的な収入を得たい方や、年金にプラスアルファの収入源を確保したいと考えている方にとって、REITは魅力的な投資対象となり得ます。ただし、分配金は保証されているものではない点には注意が必要です。

NISAなどを活用して効率的に資産運用したい人(REITもNISA対象)

REITは、NISA(少額投資非課税制度)の成長投資枠の対象となっています[4]。NISA口座を利用してREITに投資すれば、得られた分配金や売却益が一定の範囲内で非課税になるため、より効率的な資産運用が可能です。税制優遇制度を活用しながら資産形成を進めたい方にもおすすめです。

REITの仕組みやリスクを理解できる人

REITは手軽に始められるとはいえ、投資商品である以上、元本保証はなく、価格変動リスクや分配金減少リスクなどが存在します。これらのメリット・デメリットを正しく理解し、リスクを許容できる範囲で投資を行うことが大切です。投資判断を他人任せにせず、ご自身で情報を収集し、納得した上で投資できる方に向いています。

初心者でも安心!REITの始め方ステップ

REITへの投資は、株式投資などと同様に、証券会社を通じて行うのが一般的です。ここでは、REITを始めるための具体的なステップを解説します。

ステップ1:証券会社の口座を開設する

まず、REITの取引を行うためには、証券会社の口座が必要です。多くのネット証券や総合証券でREITの取り扱いがあります。口座開設は、オンラインで完結する場合が多く、本人確認書類(マイナンバーカードや運転免許証など)と銀行口座があれば、比較的簡単に手続きできます。

REITの取り扱いがある証券会社の選び方 証券会社を選ぶ際には、REITの取扱銘柄数、売買手数料、提供している投資情報ツール、サポート体制などを比較検討するとよいでしょう。特に、少額から始めたい方は、手数料が安いネット証券が選択肢に入ることが多いです。また、NISA口座を利用したい場合は、その証券会社がNISAに対応しているか、REITがNISAの対象として取り扱われているかを確認しましょう。

ステップ2:REITの銘柄を選ぶ(選び方は次章で詳しく)

証券口座が開設できたら、次に投資するREITの銘柄を選びます。REITには、投資対象不動産の種類(オフィス、商業施設、住居など)や運用方針によって様々な銘柄があります。各銘柄の分配金利回り、投資口価格、投資対象、財務状況などを比較検討し、ご自身の投資方針に合った銘柄を選びましょう。銘柄選びの具体的なポイントは、次の章で詳しく解説します。

ステップ3:REITを購入する

投資したい銘柄が決まったら、証券会社の取引システムを通じて購入注文を出します。REITは、株式と同様に「銘柄コード(4桁の数字)」と「投資口数(株数に相当)」を指定して注文します。指値注文(購入価格を指定する)や成行注文(価格を指定しない)などの注文方法があります。

個別銘柄のREITと、REITを組み入れた投資信託の違い REITに投資する方法としては、個別のREIT銘柄を直接購入する方法の他に、複数のREITに分散投資する「REITファンド(REITを組み入れた投資信託)」を購入する方法もあります。REITファンドは、より少額から、さらに分散された形でREITに投資できるメリットがありますが、信託報酬などのコストが別途かかる点に注意が必要です。どちらが良いかは、ご自身の投資スタイルや知識、リスク許容度によって異なります。

ステップ4:運用状況を確認し、必要に応じて売却する

REITを購入した後は、定期的に運用状況を確認しましょう。投資法人のウェブサイトや証券会社の情報ツールなどで、分配金の実績、保有物件の状況、市場価格の推移などをチェックできます。当初の投資目的や市況の変化に応じて、保有を継続するか、追加購入するか、あるいは売却するかを判断します。上場REITは、証券取引所の取引時間中であれば、いつでも売却することが可能です。

失敗しないためのREITの選び方とポイント

数あるREITの中から、自分に合った銘柄を選び出すのは簡単なことではありません。ここでは、REIT選びで失敗しないための重要なポイントを解説します。

ポイント1:投資対象不動産の種類とポートフォリオを確認する

REITがどのような種類の不動産に投資しているか(オフィス、商業施設、住居、物流施設、ホテル、ヘルスケア施設など)、また、それらがどのような地域に分散されているか(ポートフォリオ)を確認することは非常に重要です。ご自身がよく知っている分野や、将来性があると感じる分野に投資しているREITを選ぶのも一つの方法です。例えば、EC市場の拡大を見込むなら物流施設特化型、高齢化社会の進展に着目するならヘルスケア施設特化型などが考えられます。特定の用途に特化したREITは市況の影響を受けやすい場合があるため、複数の用途の不動産に分散投資している複合型や総合型のREITも検討してみましょう。

ポイント2:分配金利回りだけでなく、NAV倍率や財務状況もチェックする

分配金利回りの高さだけで判断しない

分配金利回り(=1口当たり分配金 ÷ 投資口価格)は、REITの収益性を見る上で重要な指標ですが、利回りが高いというだけで安易に飛びつくのは危険です。一時的に高い分配金を出していても、それが持続可能でなければ意味がありません。分配金の原資や、過去の分配金実績の安定性なども確認しましょう。

NAV倍率(純資産価値に対する価格の割安度)

LTV(Loan to Value)は、総資産に対する有利子負債の割合を示す指標で、REITの財務健全性を測るためによく用いられます。LTVが高いほど、借入金への依存度が高く、金利上昇リスクや返済リスクが大きいと判断されます。一般的に、J-REITのLTVは40~50%程度が平均的とされていますが、各REITの運用方針によって目標とするLTV水準は異なります。その他、有利子負債の返済期限や金利タイプ(固定金利か変動金利か)なども確認しておくとよいでしょう。

LTV(有利子負債比率)などの財務健全性 LTV(Loan to Value)

LTV(Loan to Value)は、総資産に対する有利子負債の割合を示す指標で、REITの財務健全性を測るためによく用いられます。LTVが高いほど、借入金への依存度が高く、金利上昇リスクや返済リスクが大きいと判断されます。一般的に、J-REITのLTVは40~50%程度が平均的とされていますが、各REITの運用方針によって目標とするLTV水準は異なります。その他、有利子負債の返済期限や金利タイプ(固定金利か変動金利か)なども確認しておくとよいでしょう。

ポイント3:スポンサー企業や運用会社の情報も参考にする

REITの運用成績は、運用会社の能力に大きく左右されます。運用会社の親会社や主要株主である「スポンサー企業」の信頼性や不動産事業における実績、財務力なども重要な判断材料となります。強力なスポンサーがいれば、優良物件の取得機会や資金調達面で有利になることがあります。また、運用会社の過去の運用実績や情報開示の積極性、運用体制なども確認し、信頼できる運用が行われているかを見極めましょう。

ポイント4:格付けを確認する(格付機関による信用評価)

格付機関(例:日本格付研究所(JCR)、格付投資情報センター(R&I)など)は、REITの発行する投資法人債やREITそのものに対して信用格付けを付与しています。格付けは、REITの財務健全性や収益安定性などを総合的に評価したもので、AAA(トリプルエー)が最も高く、以下AA、A、BBBと続きます。格付けが高いほど信用力が高く、デフォルト(債務不履行)リスクが低いとされています。ただし、格付けはあくまで過去の実績や現時点での評価であり、将来のパフォーマンスを保証するものではありません。参考情報の一つとして活用しましょう。

ポイント5:まずは複数のREITに分散投資することも検討

特定のREIT銘柄に集中投資するのではなく、複数のREITに分散して投資することもリスク管理の観点から有効です。異なる投資対象(オフィス、商業施設、住居など)や異なる運用方針を持つREITに分散することで、特定の市場環境の変化による影響を和らげることができます。個別の銘柄選びが難しいと感じる場合は、複数のREITに投資するREITファンド(投資信託)を活用するのも一つの方法です。

REITに関するFAQ(よくある質問)

ここでは、REITに関して多くの方が抱く疑問について、Q&A形式でお答えします。

Q1. REITはNISA(つみたてNISA、成長投資枠)で購入できますか?

A1. はい、REITはNISA制度を利用して購入することが可能です。具体的には、NISAの「成長投資枠」で、個別銘柄のREITや、REITを組み入れた投資信託(REITファンド)を購入できます。成長投資枠の年間非課税投資枠は240万円です。一方、「つみたてNISA(2024年からは「つみたて投資枠」)」の対象商品は、金融庁が定めた基準を満たす長期の積立・分散投資に適した投資信託やETFに限られており、個別銘柄のREITや多くのREITファンドは対象外となっています。ご自身の投資スタイルや利用したい枠に合わせて検討してください。

Q2. REITの分配金に税金はかかりますか?

A2. はい、REITの分配金は、株式の配当金と同様に所得税・復興特別所得税と住民税が課税されます。原則として20.315%(所得税及び復興特別所得税15.315%、住民税5%)の税金が源泉徴収されます。ただし、NISA口座(成長投資枠)を利用してREITに投資し、そこから得られた分配金については、非課税投資枠の範囲内であれば税金がかかりません。

Q3. おすすめのREIT銘柄は具体的にありますか?

A3. 特定の金融商品や銘柄を推奨することは、投資助言にあたる可能性があるため、ここでは具体的な銘柄名を挙げることは控えさせていただきます。REITの銘柄選びは、本記事で解説した「失敗しないためのREITの選び方とポイント」を参考にしていただき、ご自身の投資目的、リスク許容度、関心のある不動産分野などを考慮しながら、情報収集と比較検討を十分に行った上で決定することが重要です。各REITのウェブサイトや証券会社が提供する情報、格付機関のレポートなどを活用しましょう。

Q4. REITの価格は何によって変動しますか?

A4. REITの価格(投資口価格)は、様々な要因によって変動します。主な要因としては、不動産市況(空室率、賃料水準、不動産取引価格など)、金利動向(金利が上昇するとREIT価格にはマイナス要因となる傾向)、株式市場全体の動き、景気動向、為替相場(海外不動産に投資するREITの場合)、そして投資法人個別の運用状況(新規物件取得、保有物件の売却、財務戦略、災害による被害など)が挙げられます。これらの要因が複雑に絡み合って価格が形成されます。

Q5. REITは途中で売却できますか?

A5. はい、東京証券取引所などの金融商品取引所に上場しているREITであれば、株式と同様に、取引所の取引時間中(通常は平日の午前9時~11時30分、午後0時30分~3時)であれば、いつでも市場価格で売買することが可能です。証券会社を通じて売却注文を出すことで現金化できます。ただし、市場の状況によっては希望する価格やタイミングで売却できない可能性もある点には留意が必要です。

まとめ:REITで賢い不動産投資を始めよう

この記事では、REITの基本的な仕組みからメリット・デメリット、始め方、選び方のポイントまで詳しく解説してきました。

REITは、少額から手軽に不動産へ投資でき、専門家による運用、分散投資効果、比較的安定した分配金などが期待できる魅力的な金融商品です。不動産投資の専門知識がない方や、運用に手間をかけたくない方、分散投資でリスクを抑えたい方などにとって、有効な資産運用の選択肢の一つとなるでしょう。

一方で、REITは元本が保証された商品ではなく、市場価格の変動リスク、不動産市況や金利変動の影響を受けるリスク、投資法人の倒産リスクなども存在します。これらのリスクを十分に理解し、ご自身の資産状況、リスク許容度、投資目的をよく考えた上で、投資判断を行うことが重要です。

REITには様々な種類があり、それぞれ投資対象や特徴が異なります。分配金利回りだけでなく、投資対象不動産の種類、財務状況、運用会社の信頼性など、多角的な視点から銘柄を比較検討し、ご自身の方針に合ったREITを選びましょう。

この記事が、あなたのREITへの理解を深め、不動産投資への第一歩を踏み出すきっかけとなれば幸いです。賢い資産運用を通じて、より豊かな未来を築いていきましょう。

情報は2025年5月時点のものであり、最新の税制や市場動向は常に変動する可能性があります。投資判断を行う際は、必ず最新の情報をご確認ください

参考文献
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