【不動産売却】媒介契約「専属専任」「専任」「一般」の違いを解説!

【不動産売却】媒介契約「専属専任」「専任」「一般」の違いを解説!

不動産売却を考え始めたけれど、「媒介契約」という言葉を目にして、一体何のことなのか、種類がたくさんあるみたいだけど、どれを選べばいいのか、と戸惑っていませんか。実は、この媒介契約の選択が、あなたの不動産売却の行方を大きく左右する可能性があるのです。

媒介契約には、主に「専属専任媒介契約」「専任媒介契約」「一般媒介契約」の3つの種類があり、それぞれに特徴やメリット・デメリットが存在します。ご自身の状況や希望に合わない媒介契約を選んでしまうと、売却活動がスムーズに進まなかったり、思わぬ不利な状況に陥ったりすることもあり得ます。

この記事では、不動産売却におけるこれら3種類の媒介契約について、それぞれの詳しい違い、メリット・デメリット、そしてどのような方にどの契約がおすすめなのかを、不動産取引に馴染みのない方にも分かりやすく、あなたに合った媒介契約の選び方を解説します。

最後までお読みいただければ、それぞれの媒介契約の特徴を深く理解し、ご自身にとって最適な媒介契約の形態を見つけ出し、安心して不動産売却の第一歩を踏み出す助けになると思います。

目次

執筆者の自己紹介、記事内容に関するエピソード

長年にわたり不動産業界に身を置き、これまで数多くのお客様の不動産売却のお手伝いをさせていただきました。その中で、お客様が媒介契約の種類について深く理解されないまま契約を結び、後に「もっとこうすれば良かった」と後悔されるケースも残念ながら目の当たりにしてきました。

特に初めて不動産を売却される方にとって、媒介契約の選択は大きなハードルとなりがちです。「専属専任がいいと聞いたけど本当?」「一般の方が自由度が高そうだけど、デメリットはないの?」といったご相談を頻繁に受けます。

このような経験から、不動産売却を検討されている皆様が、媒介契約それぞれの特徴を正しく理解し、ご自身の状況やご希望に最適な選択を自信を持って行えるようサポートしたいという強い思いから、この記事を執筆いたしました。この記事が、皆様の不動産売却成功の一助となれば幸いです。

媒介契約の正しい理解と、ご自身に合った種類の選択

不動産売却のプロセスにおいて、媒介契約は不動産会社との間で最初に結ぶ非常に重要な契約です。この契約内容が、その後の売却活動の進め方、売却までにかかる期間、さらには売却価格にまで影響を及ぼす可能性があるのです。

それぞれの媒介契約には、不動産会社が行う売却活動の積極性、売主様ご自身で見つけた買主様と直接契約できるか否か(これを「自己発見取引」と言います)、売却活動の報告義務の頻度など、様々な違いがあります。これらの違いを理解せずに契約を選んでしまうと、「もっと手厚いサポートを受けられたはずなのに」「複数の会社に依頼したかったのにできなかった」といった不満や後悔に繋がることも少なくありません。

逆に、ご自身の不動産の特性や、売却に対するお考え(早く売りたいのか、高く売りたいのか、手間をかけたくないのか等)を明確にし、それに合致した媒介契約を選ぶことができれば、不動産会社との連携もスムーズになり、より満足のいく不動産売却が実現できる可能性が高まります。

つまり、媒介契約の種類を正しく理解し、ご自身の状況や希望に最適なものを選ぶことは、不動産売却を成功に導くための極めて重要な第一歩と言えるのです。

不動産売却の基礎知識!媒介契約とはそもそも何か?

不動産を売却しようと考えたとき、多くの場合、個人で買主を見つけるのは困難です。そこで頼りになるのが不動産会社です。不動産会社に買主探しを依頼し、売買契約の成立に向けてサポートしてもらうことを「仲介」または「媒介」と呼び、この仲介を不動産会社に正式に依頼する際に結ぶ契約が「媒介契約」です。

媒介契約は、売主と不動産会社との間で、どのような条件で売却活動を進めていくのか、どのようなサービスを提供してもらうのか、そして仲介手数料はいくらなのか、といった取り決めを明確にするための重要な契約となります。

この契約は口頭ではなく、宅地建物取引業法という法律に基づき、書面で締結することが義務付けられています。これにより、後々のトラブルを防ぎ、売主も不動産会社も安心して取引を進めることができるのです。媒介契約を締結することで、不動産会社は売主の代理人としてではなく、あくまで売主の依頼に基づき、買主との間をとりもつ役割を担います。

媒介契約には、「専属専任媒介契約」「専任媒介契約」「一般媒介契約」の3種類があります。それぞれにルールや特徴が異なり、どの種類の媒介契約を選ぶかによって、売却活動の進め方や売主の自由度が大きく変わってくるため、慎重な選択が求められます。

【一目でわかる】3種類の媒介契約 違いまとめ表

ここまで解説してきた3種類の媒介契約の主な違いを一覧表にまとめました。それぞれの特徴を比較する際にご活用ください。

比較項目専属専任媒介契約専任媒介契約一般媒介契約
契約できる
不動産会社の数
1社のみ1社のみ複数社可能
自己発見取引の可否×
売主への業務処理状況の報告義務1週間に1回以上(文書または電子メール)2週間に1回以上(文書または電子メール)法的義務なし(標準約款では遅滞なく報告。契約時に取り決め推奨)
レインズへの登録義務と期間契約締結日の翌日から5日以内契約締結日の翌日から7日以内義務なし(売主の希望により登録可)
契約の有効期間(上限)3ヶ月3ヶ月法令上の定めなし(標準約款では3ヶ月以内。行政指導も同様)

「専属専任」「専任」「一般」3種類の媒介契約の違いとは?

それでは、3種類の媒介契約「専属専任媒介契約」「専任媒介契約」「一般媒介契約」について、それぞれの主な違いを項目別に比較していきましょう。これらの違いを理解することが、最適な契約形態を選ぶための第一歩となります。

契約できる不動産会社の数で比較

まず、売却を依頼できる不動産会社の数に違いがあります。

  • 専属専任媒介契約: 他の不動産会社に重ねて依頼することはできず、1社のみにしか依頼できません。
  • 専任媒介契約: こちらも他の不動産会社に重ねて依頼することはできず、1社のみにしか依頼できません。
  • 一般媒介契約: 複数の不動産会社に同時に依頼することができます。何社に依頼するかは売主の自由です。

1社に限定する契約(専属専任・専任)は、その1社と密に連携を取りながら売却活動を進めていくスタイルです。一方、複数社に依頼できる一般媒介契約は、より多くの不動産会社のネットワークを活用できる可能性があるという特徴があります。

自己発見取引の可否で比較

自己発見取引とは、売主自身が親族や知人など、不動産会社を介さずに買主を見つけて直接契約することを指します。この自己発見取引が認められるかどうかも、契約の種類によって異なります。

  • 専属専任媒介契約: 自己発見取引は認められません。たとえ売主自身が買主を見つけた場合でも、必ず契約した不動産会社を介して取引を進める必要があります。
  • 専任媒介契約: 自己発見取引が認められています。売主が自分で買主を見つけた場合は、不動産会社を通さずに直接契約することができます。
  • 一般媒介契約: 自己発見取引が認められています。専任媒介契約と同様に、自分で見つけた買主と直接契約することが可能です。

自己発見取引の可能性を残しておきたいかどうかは、媒介契約を選ぶ上での重要なポイントの一つとなります。

不動産会社から売主への報告義務で比較

媒介契約を結んだ不動産会社は、売主に対して売却活動の状況を報告する義務があります。この報告の頻度や方法も契約の種類によって定められています。

  • 専属専任媒介契約: 1週間に1回以上、売却活動の状況を文書または電子メールで報告する義務があります。報告頻度が高く、詳細な状況を把握しやすいと言えます。
  • 専任媒介契約: 2週間に1回以上、売却活動の状況を文書または電子メールで報告する義務があります。専属専任媒介契約よりは頻度が少ないですが、定期的な報告は受けられます。
  • 一般媒介契約: 報告義務に関する法的な定めはありません。ただし、国土交通省が定める標準媒介契約約款では、不動産会社が依頼者に対して遅滞なく報告することとされていますが、頻度や方法についての強制力はありません。そのため、契約時に報告の頻度や方法について不動産会社と個別に確認し、取り決めておくことが重要です。

報告義務の頻度は、売却活動の進捗をどれだけ詳細に把握したいか、不動産会社とのコミュニケーションをどれだけ密に取りたいか、といった売主の希望によって重要度が変わってきます。

レインズ(指定流通機構)への登録義務と期間で比較

レインズ(REINS:Real Estate Information Network System)とは:国土交通大臣から指定を受けた不動産流通機構が運営している、不動産会社間で物件情報を共有するためのコンピュータネットワークシステムのことです。ここに物件情報が登録されると、全国の不動産会社がその情報を閲覧できるようになり、より多くの購入希望者に物件情報が届く可能性が高まります。

  • 専属専任媒介契約: 契約締結日の翌日から5日以内にレインズへ登録する義務があります。
  • 専任媒介契約: 契約締結日の翌日から7日以内にレインズへ登録する義務があります。
  • 一般媒介契約: レインズへの登録義務はありません。ただし、売主の希望があれば登録することは可能です。登録を希望する場合は、契約時にその旨を不動産会社に伝えましょう。

レインズへの登録は、広く買主を探す上で非常に有効な手段です。専属専任媒介契約や専任媒介契約では、このレインズへの登録が義務付けられているため、早期に多くの不動産会社の目に触れる機会が作られます。

契約の有効期間で比較

媒介契約には有効期間が定められており、その期間も種類によって上限が異なります。

  • 専属専任媒介契約: 契約の有効期間は3ヶ月以内と定められています。自動更新は認められておらず、更新する場合は再度手続きが必要です。
  • 専任媒介契約: こちらも契約の有効期間は3ヶ月以内です。同様に自動更新は認められず、更新には再契約の手続きが必要となります。
  • 一般媒介契約: 契約の有効期間について法令上の定めはありません。ただし、行政指導としては3ヶ月以内が望ましいとされており、国土交通省の標準媒介契約約款でも3ヶ月以内となっています。契約時に不動産会社と協議して期間を決定します。自動更新に関する規定もないため、更新の際は双方の合意が必要です。

契約期間は、不動産会社との関係性や売却戦略を見直す良い機会となります。特に専属専任・専任媒介契約では、3ヶ月という期間が一つの区切りとなるため、その間の活動内容や成果を評価し、更新するかどうかを判断することになります。

【メリット・デメリット】専属専任媒介契約を深掘り解説

ここからは、それぞれの媒介契約について、さらに詳しくメリットとデメリット、そしてどのような方におすすめなのかを解説していきます。まずは、最も拘束力が強いとされる「専属専任媒介契約」です。

専属専任媒介契約のメリット

専属専任媒介契約の最大のメリットは、不動産会社が売却活動に非常に積極的に取り組んでくれる傾向があることです。1社にしか依頼できないため、不動産会社にとっては、その物件を成約させることが直接的な成果に繋がりやすく、仲介手数料も確実に得られる可能性が高まります。そのため、広告宣伝費を積極的に投入したり、優先的に購入希望者を紹介したりするなど、手厚いサポートが期待できます。

また、1週間に1回以上の頻繁な業務報告義務があるため、売主は売却活動の進捗状況を詳細に把握しやすく、不動産会社とのコミュニケーションも密になります。これにより、疑問点や不安な点をすぐに相談でき、安心して売却活動を進めることができます。

さらに、契約締結後5日以内という迅速なレインズへの登録が義務付けられているため、早期に広範囲の不動産会社へ物件情報が共有され、早期売却の可能性が高まることもメリットと言えるでしょう。

専属専任媒介契約のデメリット

一方で、専属専任媒介契約にはデメリットも存在します。最大のデメリットは、1社にしか売却活動を任せられないため、その不動産会社の販売力や担当者の力量に売却の成果が大きく左右される点です。もし、選んだ不動産会社の販売戦略が物件と合わなかったり、担当者の対応が悪かったりした場合でも、契約期間内(原則3ヶ月)は他の不動産会社に依頼することができません。

また、自己発見取引が認められていないため、仮に売主自身が親族や知人など、条件の良い買主を見つけたとしても、必ず契約した不動産会社を介して取引を行う必要があり、仲介手数料が発生します。この点を不自由に感じる方もいるかもしれません。

さらに、不動産会社にとっては「両手仲介」(売主と買主の双方から仲介手数料を得ること)を狙いやすくなるため、場合によっては「囲い込み」という不正行為のリスクも考慮に入れる必要があります。「囲い込み」については後ほど詳しく解説します。

専属専任媒介契約はこんな人におすすめ!

以上のメリット・デメリットを踏まえると、専属専任媒介契約は以下のような方におすすめと言えます。

  • とにかく早く、確実に売却したい方
    • 不動産会社が積極的に販売活動を行うため、早期売却の可能性が高まります。
  • 売却活動に手間や時間をかけたくない方
    • 1社に任せることで、窓口が一本化され、売主側の負担が軽減されます。頻繁な報告により、自分で情報収集する手間も省けます。
  • 信頼できる不動産会社や担当者を見つけている方
    • 1社に全てを任せるため、信頼関係が非常に重要になります。
  • 売却活動の進捗を細かく把握したい方
    • 1週間に1回以上の報告義務により、状況を常に把握できます。

【メリット・デメリット】専任媒介契約を深掘り解説

次に、「専任媒介契約」について見ていきましょう。専属専任媒介契約と似ていますが、いくつかの重要な違いがあります。

専任媒介契約のメリット

専任媒介契約も、専属専任媒介契約と同様に1社のみに売却を依頼するため、不動産会社が比較的積極的に販売活動を行ってくれる傾向があります。不動産会社にとっては、自社で成約させれば確実に仲介手数料を得られるため、力を入れてくれることが期待できます。

また、2週間に1回以上の業務報告義務があるため、売主は定期的に売却活動の状況を把握できます。専属専任媒介契約ほどではありませんが、売却活動の透明性は保たれやすいでしょう。

そして、専属専任媒介契約との大きな違いとして、自己発見取引が認められている点が挙げられます。売主自身が買主を見つけた場合には、不動産会社を通さずに直接契約することができ、その場合は仲介手数料を支払う必要がありません。この点は、売主にとって大きなメリットとなる可能性があります。

レインズへの登録も契約締結後7日以内と義務付けられており、物件情報が広く共有されるため、買主が見つかりやすい環境が整います。

専任媒介契約のデメリット

専任媒介契約のデメリットも、基本的には専属専任媒介契約と共通する部分があります。1社にしか依頼できないため、その不動産会社の力量に売却の成否が左右されるリスクがあります。もし担当者との相性が悪かったり、販売活動に不満があったりしても、契約期間中は他の不動産会社に切り替えることが難しくなります。

また、専属専任媒介契約ほどではありませんが、報告義務の頻度が2週間に1回以上であるため、よりきめ細かい情報を逐一把握したいと考える方にとっては、少し物足りなく感じるかもしれません。

不動産会社にとっては、自己発見取引によって仲介手数料が得られない可能性があるため、専属専任媒介契約に比べると、若干販売活動への熱意が下がる可能性も理論上は考えられます。ただし、多くの不動産会社はプロとして責任を持って業務に取り組むため、過度な心配は不要でしょう。

専任媒介契約はこんな人におすすめ!

専任媒介契約は、以下のような方に向いていると言えるでしょう。

  • 不動産会社に積極的に売却活動をしてもらいたいが、自分で買主を見つける可能性も残しておきたい方
    • 基本的には不動産会社に任せて置くことができ、なおかつ自身でも買主にアプローチすることができるバランスの取れた契約形態と言えます。
  • ある程度、売却活動の状況を把握しつつ、信頼できる1社に任せたい方に
    • 2週間に1回の報告で十分と考える方に適しています。
  • 特定の不動産会社に依頼したいが、専属専任ほどの強い拘束は避けたい方
    • 専属専任よりも少し自由度があります。
  • 売却に一定の時間をかけられる方
    • 自己発見取引の可能性も探りつつ、不動産会社にもしっかり動いてもらいたい場合に適しています。

【メリット・デメリット】一般媒介契約を深掘り解説

最後に、最も自由度の高い「一般媒介契約」について見ていきましょう。

一般媒介契約のメリット

一般媒介契約の最大のメリットは、複数の不動産会社に同時に売却を依頼できる点です。これにより、各不動産会社が競争し、より良い条件での売却や早期売却に繋がる可能性があります。また、それぞれの不動産会社が持つ独自の顧客ネットワークや販売チャネルを活用できるため、より多くの購入希望者に物件情報が届くチャンスが広がります。

自己発見取引も当然認められているため、売主自身が買主を見つけた場合は、不動産会社を通さずに直接契約でき、仲介手数料もかかりません。

また、特定の1社に縛られないため、不動産会社の対応や販売活動に不満があれば、他の会社に注力したり、新たに別の会社に依頼したりと、柔軟に対応できるのも大きな利点です。売主主導で売却活動を進めたいと考える方にとっては、魅力的な契約形態と言えるでしょう。

一般媒介契約のデメリット

一方で、一般媒介契約にはデメリットも存在します。複数の不動産会社に依頼できる反面、不動産会社側からすると、自社で必ず成約できるとは限らないため、専属専任や専任媒介契約に比べて販売活動への熱意や優先順位が下がる可能性があります。広告宣伝費などの経費を積極的に投入してもらえないケースも考えられます。

また、レインズへの登録義務がないため、売主が依頼しない限り登録されず、物件情報が広く共有されない可能性があります。ただし、売主の希望があれば登録してもらうことは可能ですので、契約時に確認することが重要です。

不動産会社からの売却活動の報告義務も法的には定められていません。そのため、売主自身が各社に進捗状況を確認する必要があり、コミュニケーションの手間が増える可能性があります。どの不動産会社がどのような活動をしているのか把握しづらくなることも考えられます。

さらに、複数の不動産会社とやり取りをするため、窓口が複数になり、情報管理や連絡調整が煩雑になることもデメリットとして挙げられます。

一般媒介契約はこんな人におすすめ!

一般媒介契約は、以下のような方におすすめです。

  • 人気エリアの物件や希少性の高い物件など、比較的売却しやすい不動産をお持ちの方
    • 不動産会社が積極的に動かなくても、買主が見つかりやすい可能性があります。
  • 自分で買主を見つけるあてがある、または積極的に探したい方
    • 自己発見取引のメリットを最大限に活かせます。
  • 複数の不動産会社の意見を聞きながら、自分のペースで売却活動を進めたい方
    • 競争原理を働かせたい、あるいは複数の視点からアドバイスが欲しい場合に適しています。
  • 不動産会社に全てを任せるのではなく、ある程度自分で売却活動に関与したい方
    • 情報収集や不動産会社との連携を積極的に行える方に向いています。
  • 特定の1社に縛られたくない方
    • 柔軟に不動産会社を選びたい、変更したいと考える方に適しています。

一般媒介契約の「明示型」と「非明示型」の違いとは?

一般媒介契約の中には、さらに「明示型」と「非明示型」という2つの種類があります。これは、他にどの不動産会社に仲介を依頼しているかを、契約した不動産会社に通知するかどうかという点での違いです。

  • 明示型一般媒介契約
    • 他に仲介を依頼している不動産会社がある場合、その会社名を契約した不動産会社に通知する義務があります。これにより、不動産会社は他社の状況を把握した上で販売戦略を立てることができます。また、売主にとっても、どの会社がどのような動きをしているか透明性が高まるという側面があります。
  • 非明示型一般媒介契約
    • 他に仲介を依頼している不動産会社の名称を通知する義務はありません。売主は、どの不動産会社に依頼しているかを明らかにせずに売却活動を進めることができます。

一般的には、不動産会社間の無用な牽制を避け、各社が販売活動に集中しやすくなるという観点から、明示型が推奨されることが多いです。国土交通省が定める標準媒介契約約款でも、明示型が採用されています。どちらの型式を選ぶかは売主の自由ですが、不動産会社との信頼関係や売却活動の進めやすさを考慮して選択すると良いでしょう。

媒介契約で不利になるケースはある?注意すべきポイント

媒介契約の種類を選ぶ際には、それぞれのメリット・デメリットを理解するだけでなく、契約内容によっては売主が不利な状況に陥る可能性についても知っておくことが重要です。ここでは、特に注意すべきポイントを3つ解説します。

注意点1:不動産会社の「囲い込み」とは?

「囲い込み」とは、媒介契約を結んだ不動産会社が、売主から預かった物件情報を他の不動産会社に意図的に公開しなかったり、他の不動産会社からの購入希望者の紹介を断ったりする行為のことです。

なぜこのような行為が行われるのでしょうか。それは、不動産会社が「両手仲介」を狙うためです。両手仲介とは、売主と買主の双方から仲介手数料を得る取引形態のことで、不動産会社にとっては収益が2倍になります。囲い込みを行うことで、自社で見つけた買主と売主を直接マッチングさせ、両手仲介を実現しようとするのです。

囲い込みが行われると、売主にとっては以下のような不利益が生じる可能性があります。

  • 売却機会の損失
    • 他の不動産会社が抱える多くの購入希望者に物件情報が届かず、より良い条件で買ってくれる買主や、より早く買ってくれる買主を逃してしまう可能性があります。
  • 売却価格の低下
    • 競争原理が働かず、不動産会社が提示する特定の買主の条件でしか売却できない状況になり、相場よりも低い価格で売却せざるを得なくなることがあります。
  • 売却期間の長期化
    • 買主の選択肢が限定されるため、なかなか買い手が見つからず、売却までに時間がかかってしまうことがあります。

特に、1社にしか依頼できない専属専任媒介契約や専任媒介契約では、不動産会社が両手仲介を狙いやすい構造にあるため、囲い込みのリスクが高まると言われています。

囲い込みへの対策

  • 信頼できる不動産会社を選ぶ
    • 過去の実績や評判、担当者の誠実さなどを慎重に見極めることが最も重要です。
  • レインズへの登録状況を確認する
    • 専属専任・専任媒介契約の場合、レインズに登録された際に発行される「登録証明書」を必ず受け取り、内容を確認しましょう。
  • 売却活動の報告を注意深く聞く
    • 他の不動産会社からの問い合わせ状況などについて、具体的に質問してみましょう。
  • 複数の査定を比較する
    • 1社の査定額や意見だけを鵜呑みにせず、複数の会社から話を聞くことで、不自然な点に気づきやすくなります。

囲い込みは、売主の利益を損なう悪質な行為です。媒介契約の種類に関わらず、誠実に対応してくれる不動産会社を選ぶことが何よりも大切です。

注意点2:契約期間と更新時の確認事項

媒介契約の有効期間は、専属専任媒介契約と専任媒介契約では法律で3ヶ月以内と定められています。一般媒介契約には法令上の定めはありませんが、国土交通省の標準媒介契約約款では3ヶ月以内とされています。

この契約期間が満了する際には、不動産会社から更新の意思確認があるのが一般的です。ここで注意したいのが「自動更新」の取り扱いです。専属専任媒介契約と専任媒介契約では、自動更新は認められていません。契約を更新する場合は、必ず売主の申し出に基づき、改めて契約を締結し直す必要があります。

一般媒介契約の場合も、標準媒介契約約款では自動更新の特約は設けられていません。しかし、中には自動更新の条項が含まれている契約書も存在し得るため、契約締結時には必ず契約内容を確認しましょう。

契約更新時には、これまでの売却活動の成果や不動産会社の対応、今後の販売戦略などを改めて評価し、本当にその不動産会社に引き続き任せて良いのかを慎重に判断することが大切です。もし不満があるのであれば、契約更新をせずに他の不動産会社に変更することも検討しましょう。安易に更新せず、契約期間の満了を一つの見直しの機会と捉えることが重要です。

注意点3:媒介契約の途中解約と違約金について

媒介契約の有効期間中に、売主の都合で契約を解約したい場合、違約金が発生するケースがあります。

専属専任媒介契約・専任媒介契約の場合

  • 一方的に契約を解除した場合
  • 媒介契約の有効期間内に、他の不動産会社に依頼して売買契約を成立させた場合(専属専任・専任媒介契約ではそもそも他の不動産会社への依頼は禁止されています)
  • 不動産会社が紹介した相手と、その不動産会社を通さずに契約した場合(自己発見取引が認められない専属専任媒介契約で、自分で見つけた買主と不動産会社を通さずに契約した場合も同様)

このような場合、不動産会社がそれまでに行った売却活動にかかった費用(広告費や交通費など)の実費や、契約で定められた約定報酬額(仲介手数料)に相当する金額を違約金として請求されることがあります。ただし、不動産会社の債務不履行(例:レインズへの登録を怠った、報告義務を履行しないなど)が原因で解約する場合は、違約金を支払う必要はありません。

一般媒介契約の場合

  • 一般媒介契約には、途中解約に関する法的な縛りや違約金の規定は特にありません。しかし、契約書に個別の特約として解約に関する条項が盛り込まれている場合があるため、契約内容をよく確認する必要があります。

媒介契約を途中で解約する際には、まず契約書の内容を確認し、不動産会社に解約の意思を伝え、協議することが大切です。一方的な解約はトラブルの原因となる可能性があるため、慎重に進めましょう。やむを得ず解約する場合でも、それまでの不動産会社の活動に対する感謝の気持ちを伝えるなど、円満な解約を心がけることが望ましいです。

【診断】あなたにぴったりの媒介契約を見つけるための3つの質問

ここまで様々な情報をお伝えしてきましたが、ご自身にとってどの媒介契約が最適なのか、まだ迷われる方もいらっしゃるかもしれません。そこで、あなたにぴったりの媒介契約を見つけるための簡単な診断をご用意しました。以下の3つの質問に答えてみてください。

質問1:売却したい不動産の状況は?(人気エリアか、早期売却希望かなど)

あなたの売却したい不動産はどのような状況でしょうか。例えば、駅から近い、築年数が浅い、人気の学区内にあるなど、いわゆる「好条件」の物件で、比較的早く、あるいは高く売れる可能性が高いでしょうか。それとも、築年数が古い、駅から遠い、特殊な間取りであるなど、売却に少し工夫や時間が必要そうな物件でしょうか。

また、売却の希望時期はどうでしょうか。「できるだけ早く現金化したい」「相続税の支払い期限が迫っている」といった早期売却の強い希望がありますか。それとも、「良い条件の買主が見つかるまでじっくり待ちたい」というお考えでしょうか。

  • 「好条件の物件で、ある程度自分のペースで進めたい」または「複数の意見を聞きたい」と考える方 は、一般媒介契約も有力な選択肢です。
  • 「できるだけ早く売りたい」「売却に手間をかけたくない」または「売却に工夫が必要そうな物件」と考える方 は、不動産会社にしっかりサポートしてもらえる専属専任媒介契約や専任媒介契約が向いている可能性があります。

質問2:売却活動にどれくらい関与したい?(手間をかけたくないか、積極的に情報収集したいかなど)

不動産の売却活動に対して、あなたはどの程度関与したいとお考えですか。

「仕事が忙しいので、できるだけ手間をかけずに不動産会社に任せたい」「専門的なことはよく分からないので、プロにリードしてもらいたい」という方は、1社に任せて定期的な報告を受ける専属専任媒介契約や専任媒介契約が適しているかもしれません。窓口が一本化されるため、連絡や調整の手間も省けます。

一方で、「自分で情報を集めたり、複数の不動産会社の意見を聞いたりして、納得しながら進めたい」「自分で買主を見つける可能性も積極的に探りたい」という方は、より自由度の高い一般媒介契約が向いているでしょう。複数の不動産会社と連携を取りながら、主体的に売却活動に関わっていくことができます。

質問3:信頼できる不動産会社は見つかっている?

不動産売却の成功は、パートナーとなる不動産会社選びにかかっていると言っても過言ではありません。あなたは、すでに「この会社なら信頼できる」「この担当者になら任せられる」と思える不動産会社や担当者に出会えていますか。

もし、絶対的な信頼を置ける不動産会社が見つかっているのであれば、その会社とじっくり腰を据えて売却活動に取り組める専属専任媒介契約や専任媒介契約を選択するのも良いでしょう。深い信頼関係があれば、よりスムーズな連携が期待できます。

しかし、まだどの不動産会社が良いか決めかねている、あるいは複数の会社を比較検討したいという段階であれば、まずは一般媒介契約で複数の会社と実際にやり取りをしてみて、その中から最も信頼できる会社を見極めるというアプローチも有効です。そして、信頼できる会社が見つかった時点で、専任媒介契約や専属専任媒介契約に切り替えるという方法も考えられます。

これらの質問への回答を参考に、ご自身の状況や考えに最も近い媒介契約のタイプを検討してみてください。もちろん、これが全てではありませんので、最終的には不動産会社ともよく相談して決定することが大切です。

FAQ

最後に、不動産売却の媒介契約に関してよく寄せられる質問とその回答をまとめました。

Q1. 媒介契約を結ぶ前に、複数の不動産会社に査定を依頼しても良いのですか?

A1. はい、問題ありません。むしろ、複数の不動産会社に査定を依頼し、査定価格だけでなく、その根拠や販売戦略、担当者の対応などを比較検討することは非常に重要です。その上で、どの不動産会社と媒介契約を結ぶかを決定しましょう。

Q2. 媒介契約を結んだ後でも、不動産会社を変更することはできますか?

A2. 契約期間中(専属専任・専任の場合は原則3ヶ月)は、原則として契約した不動産会社以外に依頼することはできません。ただし、不動産会社側に契約違反(報告義務の不履行など)があった場合や、双方の合意があれば解約できることもあります。また、契約期間満了時に更新せず、他の不動産会社に変更することは自由です。一般媒介契約の場合は、複数の会社と契約できるため、特定の会社との契約を解除し、別の会社と新たに契約することも比較的容易です。

Q3. 仲介手数料はいつ支払うのですか?

A3. 仲介手数料は成功報酬であり、不動産売買契約が成立した時点で支払義務が発生します。一般的には、売買契約締結時に半金、物件の引き渡し完了時に残りの半金を支払うケースが多いです。媒介契約を結んだだけでは、仲介手数料は発生しません。

Q4. レインズに登録されると、どのようなメリットがありますか?

A4. レインズに物件情報が登録されると、その情報を全国の不動産会社が閲覧できるようになります。これにより、契約した不動産会社だけでなく、他の多くの不動産会社も買主を探してくれる可能性が広がり、より多くの購入希望者に物件情報が届きやすくなります。結果として、早期売却やより良い条件での売却に繋がる可能性があります。

Q5. 「囲い込み」をされないためには、どうすれば良いですか?

A5. 最も重要なのは、信頼できる誠実な不動産会社を選ぶことです。また、専属専任・専任媒介契約の場合は、レインズへの登録証明書を必ず受け取り、内容を確認しましょう。定期的な売却活動の報告を注意深く聞き、疑問点は遠慮なく質問することも大切です。不審な点があれば、セカンドオピニオンを求めることも検討しましょう。

まとめ

不動産売却における最初の重要なステップである媒介契約について、ご理解いただけましたでしょうか。

この記事では、「専属専任媒介契約」「専任媒介契約」「一般媒介契約」という3種類の媒介契約のそれぞれの特徴、メリット・デメリット、そしてどのような方にどの契約がおすすめなのかを詳しく解説してきました。

媒介契約の選択は、売却のスピードや価格、そして何よりも売主様の満足度に大きく関わってきます。それぞれの媒介契約の違いを正しく理解し、ご自身の不動産の状況や売却に対するお考え、そして信頼できる不動産会社との関係性を考慮しながら、最適な媒介契約を選ぶことが非常に重要です。

  • 手厚いサポートと積極的な売却活動を期待するなら → 「専属専任媒介契約」または「専任媒介契約」
  • 複数の不動産会社に依頼して競争を促したい、自分で買主を見つける可能性も残したいなら → 「一般媒介契約」

どの媒介契約を選ぶにしても、契約内容をしっかりと確認し、不明な点は不動産会社に遠慮なく質問することが大切です。そして、最も重要なのは、信頼できるパートナーとなる不動産会社を見つけることです。

この記事が、皆様が不動産売却を進める上で、自信を持って媒介契約を選び、納得のいく取引を実現するための一助となれば、これほど嬉しいことはありません。あなたの不動産売却が成功することを心より願っております。

参考文献

[1] 国土交通省 – 宅地建物取引業法 法令改正・解釈について – https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000268.html

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