家を売るなら何から始める?失敗しない売却の流れと不動産会社の選び方

「家を売るなら、まず何から始めればいいの?」

そうですよね。初めての不動産売却では、誰もが「高額な取引」と「複雑な手続き」に不安を感じるものです。

この記事は、「何から手をつければいいか分からない」と悩むあなたのために、売却の決意から完了までをロードマップのように示し、「損をしない」ための重要ポイントを分かりやすく解説します。

この記事を読めば、売却の全体像がスッキリ見え、「今、あなたがすべきこと」が明確になります。まずは最初のステップとして、この記事で不安を解消し、次の一歩を踏み出す準備を始めましょう!

目次

家を売るなら「何から」始める?初心者が最初にやるべき3つの準備

「家を売る」と決めたものの、何から手をつければいいか分からない、という方へ。まずは慌てて不動産会社に駆け込む前に、ご自身で確認しておくべき3つのステップをご紹介します。

この「準備」が、後の不動産会社選びや売却活動をスムーズに進めるための鍵となります。

①住宅ローンの残債を確認する

まず最初に確認すべきは、「売却する家の住宅ローンが今、いくら残っているか」です。これを「ローン残債(ざんさい)」と呼びます。

なぜなら、家を売却する際は、原則として住宅ローンを全額返済(完済)し、家に設定されている「抵当権」という権利を抹消しなければならないからです。

【確認方法】

  • 住宅ローンの「返済予定表」を見る
    毎年、ローンを借りている金融機関から送られてくる書類です。手元にあればすぐに確認できます。
  • 金融機関に問い合わせる
    返済予定表が見当たらない場合は、ローンを組んだ金融機関の窓口やインターネットバンキングで「残高証明書」の発行を依頼すれば、正確な金額が分かります。

【ポイント:売却価格が残債を下回る場合(オーバーローン)】

もし「売却価格(予想)< ローン残債」となる場合、いわゆる「オーバーローン」の状態です。この場合、売却代金だけではローンを完済できないため、不足分を自己資金(貯金など)で補填する必要があります。

事前に残債を把握しておくことで、「そもそも売却が可能なのか」「自己資金はいくら必要なのか」という資金計画の土台を固めることができます。

②自宅の売却相場を把握する

次に、あなたの家が「今、いくらぐらいで売れそうか」という「売却相場」をご自身で調べてみましょう。

「相場は不動産会社が査定で教えてくれるのでは?」と思うかもしれません。しかし、事前にご自身で相場を把握しておくことには、重要な意味があります。

なぜ相場を自分で知る必要があるのか?

それは、不動産会社から提示された「査定価格」が適正かどうかを判断する「モノサシ」を持つためです。

【簡単な相場の調べ方】

  • 不動産ポータルサイト(SUUMOやLIFULL HOME’Sなど)で調べる
    ご自身の家と似た条件(エリア、築年数、広さ、間取りなど)の物件が「いくらで売り出されているか(販売価格)」を検索してみましょう。
  • レインズ・マーケット・インフォメーションを利用する
    これは国土交通省が指定した不動産流通機構(レインズ)が運営するサイトで、「実際に売買が成立した価格(成約価格)」を調べることができます。ポータルサイトの「販売価格」よりも、より実態に近い相場感が掴めます。

ただし、これらはあくまで目安です。正確な価格は、不動産会社によるプロの「査定」が必要になります。

③必要な書類をチェックする

最後に、家の売却に関連する書類が手元に揃っているかを確認しましょう。これらの書類は、正確な査定や売買契約時に必要となります。

「どこにしまったか分からない」という書類も多いはずです。慌てないためにも、この段階でリストアップし、探しておきましょう。

【主な必要書類リスト】

  • 登記済権利証(または登記識別情報通知)
    • いわゆる「権利証」です。家の所有者であることを証明する重要な書類です。
  • 購入時の売買契約書・重要事項説明書
    • あなたがその家を購入した時の書類です。
  • 固定資産税納税通知書(および課税明細書)
    • 毎年春頃に市区町村から送られてくる書類。固定資産税額の確認に使います。
  • 建築確認済証・検査済証
    • 建物が法律に沿って建てられたことを証明する書類です。
  • マンションの管理規約・使用細則(マンションの場合)

万が一、「権利証」などを紛失してしまった場合でも、司法書士による本人確認手続きなどで対応可能です。見当たらない場合は、不動産会社に相談する際に正直に伝えましょう。

家を売るなら知っておきたい!売却の全ステップと流れ

準備が整ったら、いよいよ具体的な売却活動に進みます。

家の売却は、一般的に「相談・査定」から「引き渡し」まで、早くても3ヶ月、平均すると6ヶ月程度の時間がかかります。

全体の流れ(ロードマップ)を把握しておくことで、「今、自分はどの段階にいるのか」「次に何をすべきか」が分かり、不安なく進めることができます。

ステップ1:売却相談・査定依頼

まずは不動産会社に売却の相談をし、「査定」を依頼します。査定とは、「あなたの家がいくらで売れそうか」をプロの目線で算出してもらうことです。

査定には2種類あります。

  • 机上査定(簡易査定)
    物件のデータ(築年数、面積、立地など)と過去の取引事例を基に、概算の価格を算出します。訪問なしで、メールや電話で結果を知りたい場合に適しています。
  • 訪問査定(現地査定)
    不動産会社の担当者が実際に現地を訪問し、建物の状態(日当たり、眺望、傷み具合、リフォームの有無など)を細かくチェックしたうえで、より正確な査定価格を算出します。

売却を具体的に進める場合は、必ず「訪問査定」を依頼しましょう。机上査定では分からない物件の「良い点」(例:リフォーム済みで綺麗、庭の手入れが行き届いている等)も価格に反映してもらえるため、より精度の高い査定が期待できます。

ステップ2:不動産会社と媒介契約を結ぶ

査定価格や担当者の対応などを比較検討し、売却を任せる不動産会社が決まったら、「媒介契約(ばいかいけいやく)」を結びます。

これは、「私の家の売却活動を、あなた(不動産会社)に正式にお願いします」という契約です。この契約を結んで、初めて不動産会社は正式な販売活動を開始できます。

媒介契約には、以下の3種類があります。

契約の種類複数社への依頼自己発見取引(※)レインズへの登録販売活動の報告義務
専属専任媒介1社のみ不可5日以内1週間に1回以上
専任媒介1社のみ可能7日以内2週間に1回以上
一般媒介可能可能任意
(広く買主を探すため登録することが多い)
報告義務なし

(※)自己発見取引:売主が自分で買主を見つけてくること(例:知人、親戚など)

【自分にはどれが合うかの判断基準】

  • 専属専任・専任媒介(1社に絞る)
    「この会社に本気で売ってもらいたい」と信頼できる1社が見つかった場合。不動産会社側の責任も重くなるため、手厚い報告や積極的な販売活動が期待できます。
  • 一般媒介(複数社に依頼)
    「広く声をかけて、良い条件の買主を早く見つけたい」「人気エリアの物件で、すぐに売れる自信がある」場合。ただし、不動産会社側の販売活動が手薄になる可能性もあります。

初めての売却で不安な方は、まずは「専任媒介」で1社とじっくり向き合い、定期的な報告を受けながら進めるのが一般的です。

ステップ3:販売活動開始

媒介契約を結ぶと、不動産会社は以下のような販売活動を開始し、買主(購入希望者)を探します。

  • 不動産流通機構「レインズ」への物件登録
  • 自社のホームページやポータルサイト(SUUMOなど)への掲載
  • 新聞折り込みチラシ、ポスティング
  • 既存顧客(購入希望者)への紹介

【内覧対応のコツ】

販売活動が始まると、購入希望者からの「内覧(家の中を見学したい)」の申し込みが入ります。内覧は、買主が購入を決意する重要な場面です。

  • 掃除と整理整頓
    •  第一印象が大切です。特に水回り(キッチン、浴室、トイレ)や玄関は清潔にしておきましょう。
  • 明るさと換気
    • 当日はすべての照明をつけ、窓を開けて空気を入れ替え、家を明るく広く見せましょう。
  • 売主の対応
    • 基本的に案内や説明は不動産会社の担当者に任せ、売主は質問されたことにていねいに答える程度に留めましょう。

関連記事:オープンルームとは?マンション売却を成功させるコツ

ステップ4:購入希望者と売買契約を結ぶ

内覧した人から「この家を買いたい」という意思表示(購入申込書)があると、価格や引き渡し時期などの「条件交渉」に入ります。交渉はすべて不動産会社が間に入って調整します。

双方の条件が合意に至ったら、「売買契約」を締結します。

この際、買主から売主へ「手付金」(売買価格の5%〜10%程度)が支払われます。

売買契約を結ぶと、法的な拘束力が生じます。もし契約後に自己都合でキャンセルする場合は、手付金を返還したり、違約金が発生したりするため、契約内容は不動産会社(宅地建物取引士)の説明をよく聞き、納得したうえで署名・捺印しましょう。

ステップ5:決済・物件の引き渡し

売買契約から約1ヶ月後、最終ステップである「決済」と「物件の引き渡し」を行います。

これは通常、平日の日中に、買主が利用する金融機関の応接室などで行われます。売主・買主・不動産会社・司法書士が全員集まります。

【当日の流れ】

  1. 残代金の受け取り
    • 買主から売主へ、売買価格から手付金を引いた「残代金」が支払われます。(通常は銀行振込)
  2. 住宅ローンの完済
    • 売主は、そのお金で自身の住宅ローンを全額返済(完済)します。
  3. 抵当権の抹消
    • 司法書士が、ローン完済に伴う「抵当権抹消」の登記手続きを行います。
  4. 引き渡し
    • 鍵や物件の関連書類(建築確認済証、各種設備の取扱説明書など)を買主へ渡し、売却が完了します。

ステップ6:売却後の税金と確定申告

家を売却して終わり、ではありません。

家を売って利益(譲渡所得)が出た場合は、その利益に対して「所得税」と「住民税」が課税されます。

利益が出た場合はもちろん、特例(3,000万円特別控除など)を使って税金がゼロになる場合や、損をした場合(譲渡損失)でも、税金の優遇措置を受けるためには、売却した翌年に「確定申告」を行う必要があります。

税金に関するルールは非常に複雑なため、必ず不動産会社や税務署、税理士などの専門家に相談しましょう。

家を売るなら「どこがいい」?失敗しない不動産会社の選び方

売却の流れ(ステップ)を見てきましたが、これらのステップを成功に導けるかどうかは、パートナーとなる不動産会社選びが、売却の成否を大きく左右すると言っても過言ではありません

「家を売るならどこがいい?」という、誰もが悩むこの疑問にお答えします。

まず知るべき「仲介」と「買取」の違い

まず、家の売り方には大きく分けて2つの方法があります。

  1. 仲介(ちゅうかい)
    不動産会社が「買主を探す手伝い」をしてくれる方法。不動産会社はあくまで売主と買主の間に入り、売買を成立させます。一般的な売却方法はこちらです。
  2. 買取(かいとり)
    不動産会社が「直接、あなたの家を買主として買い取る」方法。

それぞれのメリット・デメリットを理解し、自分の状況に合う方を選びましょう。

比較項目仲介買取
売却価格高い(相場価格)安い(相場より2〜3割減)
売却スピード遅い(3ヶ月〜)早い(最短数日〜)
手間かかる(内覧対応など)かからない
向いている人・時間がかかっても高く売りたい
・築浅や人気エリアの物件
・すぐに現金化したい(住み替えなど)
・内覧対応などの手間を省きたい
・古い家や訳あり物件

「家を売るならカチタス」といったCMで知られる企業は、この「買取」を専門または得意としているケースが多いです。

すぐに現金化したい特別な事情がない限りは、高く売れる可能性のある「仲介」を選ぶのが一般的です。この記事でも、主に「仲介」を前提に解説を進めます。

「大手不動産会社」のメリット・デメリット

「三井のリハウス」や「東急リバブル」など、テレビCMや駅前の店舗でよく見かけるのが大手不動産会社です。

  • メリット
    • 安心感とブランド力: 「大手だから安心」という信頼感は、売主にとっても買主にとっても大きい要素です。
    • 広いネットワークと広告力: 全国規模の店舗網や豊富な広告予算を持ち、広範囲の購入希望者にアピールできます。
    • 充実したサービス: 売却後の保証や、税務・法務のサポート体制が整っていることが多いです。
  • デメリット
    • 担当者の異動: 大企業ならではの転勤や異動で、途中で担当者が変わる可能性があります。
    • 画一的な対応: マニュアル化された営業スタイルが多く、融通が利きにくいと感じる場合もあります。

「地域密着型の不動産会社」のメリット・デメリット

一方、特定のエリア(「〇〇市専門」など)で長年営業しているのが地域密着型の不動産会社です。

  • メリット
    • 地元の情報に精通: その土地ならではの強み・弱み(学校区、治安、近隣情報など)を熟知しており、買主へピンポイントな訴求ができます。
    • 独自の買い手リスト: 「このエリアで家が出たら教えて」という地元の購入希望者を抱えている可能性があります。
    • 小回りが利く対応: 社長やベテランが直接担当することが多く、柔軟な対応が期待できます。
  • デメリット
    • 広告力・集客力: 大手に比べ、ポータルサイトへの掲載や広告宣伝の規模が小さい場合があります。
    • 担当者との相性: 会社規模が小さい分、担当者個人の力量や経験に左右されやすい側面があります。

「一括査定サイト」で複数社を比較する

「大手」と「地域密着型」、どちらにも一長一短があります。
では、どうやって自分に最適な会社を見つければよいのでしょうか。

その答えは、「両方のタイプの会社に、同時に査定を依頼して比較する」ことです。
ここで役立つのが、インターネットの「不動産一括査定サイト」です。
物件情報を一度入力するだけで、大手から地域密着型の優良企業まで、複数社にまとめて査定を依頼できます。

【なぜ一括査定(複数社比較)が重要なのか?】

  1. 適正な売却価格が分かる
    1社だけの査定では、その価格が高いのか安いのか判断できません。複数社の査定額を比較することで、客観的な相場感が掴めます。
  2. 不動産会社(担当者)を比較できる
    価格だけでなく、各社の対応の速さや提案内容(H2-4で後述)を比較し、信頼できるパートナーを選ぶことができます。
  3. 競争原理が働く
    不動産会社側も「他社と比較されている」と分かっているため、最初から真剣な査定価格や良い提案を出してくれる可能性が高まります。

一括査定サイトは、手間をかけずに最適なパートナー探しの「候補」を集められる、売却初心者のための強力なツールです。

信頼できる「担当者」を見極める5つのポイント

一括査定などで複数の不動産会社と接点ができたら、いよいよ「どの会社に任せるか」を決める段階です。

ここで覚えておいてほしいのは、「会社(看板)で選ぶ」のではなく、「担当者(人)で選ぶ」という視点です。
なぜなら、いくら大手でも、売却活動を実際に動かすのは目の前にいる「担当者」一人だからです。

訪問査定の際などに、以下の5つのポイントをチェックして、信頼できる担当者かどうかを見極めましょう。

①査定価格の「根拠」が明確か?

査定価格を提示されたら、「なぜ、この金額になるのですか?」と必ず質問してください。

  • 良い担当者
    周辺の類似物件の「成約事例」や「現在の販売事例」、市場の動向(金利や需要)など、客観的なデータ(根拠)に基づき、査定価格をロジカルに説明してくれます。
  • 注意すべき担当者
    「売れますよ!」と根拠なく高い査定額だけを提示してくる。これは、売主と媒介契約を結びたいがための「釣り」である可能性(=囲い込み目的)があります。

②デメリットやリスクも正直に話してくれるか?

「この家は素晴らしいですね」と良い点ばかりを褒める担当者より、信頼できるのは「悪い点」も正直に指摘してくれる担当者です。

例えば、「駅からは少し歩きますが、その分静かな環境が魅力ですね」「築年数は経っていますが、リフォームでこう見せましょう」など。

売却におけるデメリットやリスクを事前に把握し、その「対策」までセットで提案してくれる担当者は、売主の立場で真剣に考えてくれている証拠です。

③どのような「販売戦略」を考えているか?

「どうやって買主を見つけるのか」という「販売戦略」を具体的に聞いてみましょう。

  • 注意すべき担当者
    「ポータルサイトとレインズに登録します」という、最低限の答えしか返ってこない場合。
  • 良い担当者
    「この物件のターゲット層は〇〇なので、こういう写真を使って、△△というキャッチコピーでポータルサイトに掲載します」「このエリアでお探しの方が〇名いらっしゃるので、まずその方に紹介します」など、あなたの家のためだけの具体的な販売プランを提案してくれます。

④レスポンス(連絡)が早いか?

査定依頼や質問をした際の「連絡のスピード」と「丁寧さ」も重要です。

売却活動中は、内覧の日程調整や買主からの条件交渉など、スピーディーな判断と連絡が求められる場面が多々あります。
最初の段階でレスポンスが遅い担当者は、売却活動が始まってからもあなたを不安にさせる可能性が高いでしょう。

⑤あなたの話をしっかり聞いてくれるか?

最後に、その担当者が「あなたの話をしっかり聞いてくれるか」です。

売主には、それぞれ「いつまでに売りたい」「近所には知られずに売りたい」「とにかく高く売りたい」といった個別の「事情」や「希望」があります。

こちらの話を遮って一方的に自社の強みばかりを話す担当者ではなく、まずあなたの事情や希望を丁寧にヒアリング(質問)し、それを汲み取ったうえで提案をしてくれる担当者を選びましょう。

まとめ

この記事では、「家を売るなら何から始めるか」という疑問にお答えするため、売却の「準備」、全体の「流れ」、そして「不動産会社の選び方」について解説してきました。

家の売却は、人生で何度も経験することのない、高額で複雑な取引です。何から始めればいいか分からず、不安になるのは当然のことです。

しかし、その不安の多くは「知識がないこと」と「信頼できる相談相手がいないこと」から生まれています。

「何から始めればいいか分からない」状態から抜け出すための次の一歩は、「あなたの家が今、いくらの価値があるのか」を客観的に知ることから始まります。

まずは不動産一括査定サイトなどを活用し、複数の会社に相談してみることからスタートしてみてはいかがでしょうか。

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