オーナーチェンジ物件は危険?後悔しないための7つのチェック点

オーナーチェンジ物件は「買ってすぐ家賃収入」が得られるため、不動産投資の初心者にも魅力的に映ります。しかし、その裏で「危険だ」「買って後悔した」という声が多いのも事実です。なぜ危険と言われるのか、不安を感じていませんか?

この記事では、オーナーチェンジ物件に潜む具体的なリスクと、購入後に「こんなはずじゃなかった」と失敗しないために必須の「7つのチェック点」を徹底解説します。

読み終える頃には、物件資料から滞納リスクや隠れた問題点を見抜くためのヒントを学び、危険な物件を回避して優良物件を選ぶための「冷静な判断軸」を持つための知識を得られるでしょう!

目次

そもそもオーナーチェンジ物件とは?

まず、オーナーチェンジ物件がどのようなものか、基本的な仕組みとメリット・デメリットを整理しましょう。

オーナーチェンジ物件の基本的な仕組み

オーナーチェンジ物件とは、「入居者がいる状態(賃貸中)」のまま売買される不動産物件(マンションの一室、アパート一棟など)を指します。

通常の不動産売買と大きく異なるのは、買主(あなた)が物件の所有権を手に入れると同時に、「賃貸人(=大家さん)」としての地位も引き継ぐ点です。

具体的には、以下の権利と義務を、売主(旧オーナー)からそのまま承継(引き継ぐこと)します。

  • 権利
    • 入居者から毎月の家賃を受け取る権利
  • 義務
    • 入居者から預かっている敷金を、退去時に返還する義務

この「大家さんの地位」が古いオーナーから新しいオーナーへ変わることから、「オーナーチェンジ」と呼ばれています。

空室物件との決定的な違い

投資用物件を探す際、空室の物件を買う場合とオーナーチェンジ物件を買う場合では、何が違うのでしょうか。決定的な違いは以下の5点です。

【メリット】

  1. 購入直後から家賃収入が発生する
    これが大きなメリットです。空室物件の場合、購入後にリフォームし、入居者募集(広告)を行い、契約が成立して初めて家賃が入ります。オーナーチェンジ物件なら、所有権が移転したその月から家賃収入が確定しているため、キャッシュフローの見通しが立てやすいのが特徴です。
  2. 募集の手間やリフォーム費用がかからない
    すでに入居者がいるため、賃貸募集の広告費や仲介会社への手数料、入居付けのためのリフォーム費用が(少なくとも購入直後は)一切かかりません。

【デメリット】

  1. 原則として「室内の内見」ができない
    入居者が生活しているため、オーナー都合で「買いたい人がいるから部屋を見せて」とは言えません。これが大きなリスクであり、「危険」と言われる大きな理由です(詳しくは次章で解説します)。
  2. 住宅ローンが使えない
    オーナーチェンジ物件は「投資用」とみなされるため、金利が安い「住宅ローン」は利用できません。金利が比較的高め(一般的に2%〜5%程度)の「不動産投資ローン(アパートローン)」を利用することになります。
  3. 入居者を自分で選べない
    当然ですが、すでに入居している人の契約(家賃、人柄、家族構成など)をそのまま引き継ぐことになります。

オーナーチェンジ物件が「危険」「やめとけ」と言われる5つの理由

「すぐに家賃収入」という魅力的な響きの裏で、なぜオーナーチェンジ物件は「危険だ」「やめとけ」とまで言われるのでしょうか。不動産投資の初心者が陥りがちな「後悔」のパターンと、その理由を5つ解説します。

①室内の状況を内見で確認できない

「危険」と言われる大きな理由がこれです。あなたは、一度も中を見ないまま、数百万、数千万の買い物をすることになります。

確認できないのは、主に以下の点です。

  • 室内の汚れ、傷、破損(フローリング、壁紙など)
  • 水回り(キッチン、浴室、トイレ)の状況や臭い
  • エアコンや給湯器など、備え付け設備のコンディション

【後悔パターン】

「利回りが良いから」と購入。数年後、やっと入居者が退去したので室内に入ったら、タバコのヤニで壁紙は真っ黒、床は傷だらけ、水回りはカビだらけ。想定していた原状回復費用の3倍、100万円以上のリフォーム費用がかかり、数年分の家賃収入が吹き飛んだ…

このような事態が起こり得ます。ひどいケースでは、前のオーナーが隠していた「心理的瑕疵(告知事項あり)」が、退去後のリフォームで発覚することすらあります。

②入居者の情報を(レントロール以外で)把握しづらい

物件の収益性を判断する資料として「レントロール(賃貸借条件一覧表)」があります。ここには家賃や契約日などが書かれていますが、入居者の「人柄」や「素行」までは書かれていません。

  • 家賃滞納の常習犯ではないか?
  • 騒音やゴミ出しルール違反を繰り返すトラブルメーカーではないか?
  • 反社会的な勢力と関わりがないか?

これらは書類上では判断が極めて困難です。もし問題のある入居者を引き継いでしまった場合、その対応(督促、クレーム処理)に新オーナーであるあなたが疲弊することになります。

③相場より不利な賃貸契約を引き継ぐリスク

特に注意したいのが、入居時期が非常に古い(10年、20年以上)ケースです。

当時の家賃設定のまま現在に至る場合、近隣の類似物件の家賃相場より、月額1万円、2万円と著しく安い家賃になっていることがあります。

「利回り〇%」という数字は、あくまで「現在の家賃」で計算されています。相場より安い家賃では、本来得られるはずだった収益が得られず、あなたの投資計画(利回り)は根底から崩れてしまいます。

「じゃあ値上げすればいい」と思うかもしれませんが、借地借家法では入居者(賃借人)の権利が強く守られており、オーナー都合での家賃値上げ交渉は、法的なハードルが非常に高く困難です。

④売主の「ネガティブな売却理由」

そもそも、なぜ売主は「金の卵」とも言える家賃収入(キャッシュフロー)を生む物件を手放すのでしょうか?

もちろん「資産整理」「相続対策」「他の物件への買い替え資金」といったポジティブな理由も多くあります。

しかし、中にはネガティブな理由が隠されているケースも少なくありません。

  • 「入居者トラブル(滞納・騒音)に疲れ果てた…」
  • 「もうすぐ大規模修繕で多額の出費が必要だが、払いたくない…」
  • 「近隣に安い新築アパートが建ち、次の入居者が見込めない…」

これらは、売主が抱える「問題」を、次のオーナー(あなた)に押し付けるための売却です。不動産会社の担当者に売却理由を尋ねても、本当のことは言わない可能性もあります。

⑤「自分で住む」ためのハードルが非常に高い

「投資用だけど、相場より安い。将来的にリフォームして自分で住もう」

「いま入居者がいるから安い。買ってから入居者に出ていってもらおう(追い出そう)」

この考えは通用しません。

理由3でも触れましたが、日本の法律(借地借家法)では、入居者の「住む権利(居住権)」が非常に強く保護されています。

オーナー側の「自分が住みたいから」という理由は、法律上の「正当事由」として認められません。もし退去を要求(いわゆる「追い出し」)しようとすれば、高額な立ち退き料の支払いが必要になるか、最悪の場合、裁判で敗訴します。

オーナーチェンジ物件で後悔しないための「7つのチェック点」

では、これらの「危険」を回避し、優良なオーナーチェンジ物件を見抜くためには、具体的に何をチェックすればよいのでしょうか。

「内見できない」からこそ、「書類」と「ヒアリング」が全てです。不動産投資のプロが必ず確認する、必須の7つのチェック点を解説します。

①レントロール(賃貸借条件一覧表)

これは物件の「成績表」です。最低限、以下の項目を確認します。

  • 何を見るか
    • 現在の家賃、共益費(管理費)
    • 敷金の額(いくら預かっているか)
    • 契約開始日(いつから入居しているか)
  • チェックポイント
    「家賃」と「契約開始日」の組み合わせが重要です。
    • (例A)契約開始日が15年前で、家賃が相場より安い。
      → リスク:現在の収益性は低い。
      → チャンス:もし退去が出れば、家賃を相場まで上げて(=収益改善)再募集できる可能性がある。
    • (例B)契約開始日が3ヶ月前で、家賃が相場より不自然に安い。
      → 危険信号:なぜ安い家賃で入居させたのか?(「事故物件」で家賃を下げている、入居審査が甘い管理会社で滞納リスクがある、など)
    • (例C)家賃が「相場より高すぎる」
      → 危険信号:「サクラ」の入居者(売主の関係者)を高額家賃で入居させ、物件の利回りを意図的に高く見せかけている(=売り逃げ)可能性があります。

②入居者の「滞納履歴」

これが7つのチェック点の中でも重要です。

レントロールはただの「予定表」ですが、こちらは「実績」です。

  • どう調べるか
    不動産仲介会社を通じて、「現管理会社が発行する『送金明細(家賃の入金履歴)』を、最低でも過去1〜2年分」取り寄せてください。
  • チェックポイント
    送金明細を見れば、入居者が「いつ」「いくら」払ったかが全てわかります。
    • 毎月、期日通りに満額入金されているか?
    • 「数日遅れ」が常態化していないか?
    • 「2ヶ月分まとめて」などの不規則な入金がないか?
    • 「未収」「滞納」の記録が残っていないか?

もし売主や管理会社が「個人情報だから」とこの明細の開示を渋る場合、何か隠している(=滞納がある)可能性が高いと判断し、その物件の購入は見送るべきです。

③賃貸借契約書の写し

次に、入居者と旧オーナーが結んだ「賃貸借契約書」のコピー(写し)をもらいます。

  • 何を見るか
    • 契約形態(「普通借家契約」「定期借家契約」か)
    • 契約期間(満了はいつか)、更新料の有無
    • 保証人(または保証会社)の有無
    • 特約事項(ペット飼育、原状回復のルールなど)
  • チェックポイント
    特に「保証会社の利用有無」は重要です。もし入居者が保証会社を利用していれば、万が一家賃滞納が発生しても、保証会社が立て替えてくれるため、新オーナー(あなた)の滞納リスクはほぼゼロになります。
    また、不利な特約(例:退去時のリフォーム費用は理由を問わず全てオーナー負担、など)が設定されていないかも必ず確認してください。

④管理会社へのヒアリング

書類だけではわからない「人」の部分は、現在の管理会社に聞くしかありません。不動産仲介会社の担当者経由で、以下の点をヒアリングしてもらいましょう。

  • 何を聞くか
    • 「過去のクレーム履歴(騒音、ゴミ出しなど)はありませんか?」
    • 「入居者から頻繁な要望(修理依頼など)はありませんか?」
  • チェックポイント
    管理会社は、日々入居者と接している「現場」です。「送金明細(=お金の信用)」と「ヒアリング(=トラブル履歴の確認)」を組み合わせることで、優良な入居者かどうかを判断します。

⑤建物の管理状況と長期修繕計画(区分マンションの場合)

室内の「専有部分」は見れませんが、建物全体の「共用部分」は自分の目で確認できます。

  • 何を見るか
    • (現地確認)エントランス、廊下、ゴミ置き場は清掃されているか?
    • (書類確認)「長期修繕計画書」「修繕積立金の総額」「積立金の滞納状況」「管理規約(ペット可否など)」。
  • チェックポイント
    区分マンション投資で怖いのが「修繕積立金」の不足です。積立金が計画通りに集まっていない(=滞納が多い、計画が甘い)と、将来、大規模修繕の際に「一時金」として数十万円の追加徴収が発生したり、管理費・積立金が大幅に値上げされたりするリスクがあり、収益性を圧迫します。
  • (一棟アパートの場合)
    外壁のヒビ割れ、屋上の防水状況、共用部のサビなどを確認し、次回の修繕がいつ頃必要になりそうか(=いくら費用がかかりそうか)を予測します。

⑥敷金の「承継(引き継ぎ)」

入居者から預かっている敷金は、旧オーナーから新オーナー(あなた)へ引き継がれます。これは「負債」の引き継ぎです。

  • 何を確認するか
    売買契約書や精算書に「敷金(預り金)〇〇円の承継」が明記されているか。
  • チェックポイント
    敷金は「いつか入居者に返すべきお金」です。そのため、売買代金の決済時に、「売買代金から敷金相当額を差し引く」形で精算するのが一般的です。
    (例:物件価格1,000万円、預かり敷金10万円 → 決済時に支払う額は990万円)
    この精算方法を理解していないと、退去時にあなたが全額自腹で敷金を返還することになってしまいます。

⑦売主の「売却理由」

最後に「なぜ売るのか」を(可能な限り)確認します。

  • 何を確認するか
    不動産仲介会社の担当者に、ストレートにヒアリングします。
  • チェックポイント
    • 安心な理由: 「資産整理(現金化)」「相続税の納税資金」「転勤」「他の大型物件への買い替え」など、物件自体に問題がない理由。
    • 危険な理由: 「入居者との関係」「収益性の悪化」など。

まとめ

オーナーチェンジ物件は、確かに「危険」な側面を持っています。しかし、その危険性の正体の多くは、「情報が不足している(=内見できない、入居者情報が不明)」ということに起因しています。

逆に言えば、今回紹介した「7つのチェック点」を駆使して、書類とヒアリングによる情報収集を徹底すれば、そのリスクは大幅に軽減できます。

「内見できない」からこそ、レントロール、送金明細、契約書、管理履歴といった「紙」がすべてを物語ります。漠然とした不安のまま購入して「後悔」するのではなく、リスクを具体的に洗い出し、許容できるかを冷静に判断することが、不動産投資の第一歩です。

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