マンションの構造まるわかりガイド:RC・SRC・S造を徹底比較!
はじめに
マンションを選ぶ際、立地や間取り、価格に目が行きがちですが、「構造」も非常に重要な要素です。建物の構造は、住まいの安全性(特に耐震性)、快適性(遮音性や断熱性)、さらには将来的な資産価値にも大きく関わってきます。
この記事では、不動産のプロの視点から、マンションで主に採用される「RC造」「SRC造」「S造」という3つの構造を中心に、それぞれの特徴、メリット・デメリット、耐震性、価格への影響、そしてどのような方におすすめなのかを徹底解説します。また、構造形式(ラーメン構造・壁式構造)や、耐震性を高める技術(耐震・制震・免震)についても触れていきます。この記事を読めば、ご自身のライフスタイルやこだわりに合ったマンション構造を見極めるヒントが得られるはずです。
1. マンションの主な構造の種類
マンションの構造は、主にRC造(鉄筋コンクリート造)、SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)、S造(鉄骨造)の3種類に分けられます。
これから、それぞれのメリット・デメリットや耐震性、価格への影響などを解説していきます。
1-1. RC造(鉄筋コンクリート造)
構造の概要:鉄筋を組んだ型枠にコンクリートを流し込んで固めた構造です。鉄筋が引張力(引っ張る力)に、コンクリートが圧縮力(押さえつける力)に強いという、両者の長所を組み合わせて強度を高めています。日本の中層マンションで最も標準的に採用されています。
メリット
- 耐震性、耐火性、耐久性に優れています。
- コンクリートの性質上、遮音性や断熱性が比較的高いです。
- 法定耐用年数が47年と長く、適切に管理されていれば資産価値を維持しやすいとされています。
デメリット
- コンクリート自体の重量があるため、特にラーメン構造の場合、柱や梁が太くなる傾向があります。
- 気密性が高い反面、結露が発生しやすい場合があります。
- 建築コストはSRC造よりは抑えられますが、S造よりは高くなります。
耐震性: 高いレベルにあります。
価格への影響
- 建築コストは中程度です。分譲価格もそれに準じます。
- 耐久性が高く、広く普及しているため、安定したリセールバリュー(再販価値)が期待できます。
こんな人におすすめ
- 地震や火災への安心感を重視する方
- 生活音を気にする方
- コストと性能のバランスが良い物件を求める方
- 主に中規模マンション(3階建て〜10階建て程度)を検討している方
1-2. SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)
構造の概要:RC造の芯部に鉄骨(S)を内蔵した、いわばRC造とS造のハイブリッド構造です。鉄骨のしなやかさと鉄筋コンクリートの剛性を併せ持ちます。
メリット
- RC造をさらに上回る、極めて高い耐震性と耐久性を誇ります。
- 強度が高いため、柱や梁をRC造よりも細くすることが可能で、高層化に適しており、広い空間設計もしやすいです。タワーマンションなど大規模・高層建築物に多く採用されています。
- RC造同様、法定耐用年数は47年です。
デメリット
- 鉄骨と鉄筋コンクリートを組み合わせるため、構造が複雑になり、建築コストが最も高くなります。
- RC造よりも工期が長くなる傾向があります。
- RC造と同様に気密性が高いため、結露対策が必要です。
耐震性: 非常に高い、トップクラスの性能を持ちます。
価格への影響
- 建築コストが高いため、分譲価格や賃料も高額になる傾向があります。
- 最高レベルの耐震性・耐久性を持つことから、資産価値・リセールバリューも非常に高く評価される傾向にあります。
こんな人におすすめ
- タワーマンションなど高層階に住みたい方
- コストをかけてでも最高の安全性と耐久性を確保したい方
- 長期的な資産価値を重視する方
1-3. S造(鉄骨造)
構造の概要: 柱や梁などの骨組みに鉄骨を使用した構造です。使用する鉄骨の厚みによって「重量鉄骨造」と「軽量鉄骨造」に分けられます。マンションでは主に重量鉄骨が使われます。
メリット
- 鉄骨はしなやかで粘り強さがあり、軽量なため、耐震性に優れています(ただしRC, SRC比較では劣る場合あり)。
- 柱の間隔を広く取れるため、設計の自由度が高く、開放的な空間を作りやすいです。(特に重量鉄骨造)
- 部材が工場生産されるため品質が安定しやすく、現場での工期が比較的短く済みます。
- 建築コストをRC造やSRC造に比べて抑えることができます。
デメリット
- RC造やSRC造と比較すると、遮音性や耐火性、振動の伝わりやすさの面で劣る場合があります。
- 法定耐用年数は、重量鉄骨造で34年、軽量鉄骨造で19年または27年と、RC/SRC造より短めです。
耐震性:一般的にRC造、SRC造よりは劣るとされますが、建築基準法で定められた耐震基準はクリアしています。
価格への影響
- 建築コストが比較的安いため、新築時の分譲価格や賃料が抑えられる傾向があります。
- 耐久性や遮音性などの点から、RC造やSRC造に比べるとリセールバリューはやや低くなる可能性があります。
- こんな人におすすめ: 建築コストや初期費用を抑えたい方、アパートや比較的小規模なマンションを検討している方、広いリビングや個性的な間取りなど、デザインや空間の自由度を重視する方(特に重量鉄骨造の場合)。
こんな人におすすめ
- 建築コストや初期費用を抑えたい方
- アパートや比較的小規模なマンションを検討している方
- 広いリビングや個性的な間取りなど
- デザインや空間の自由度を重視する方(特に重量鉄骨造の場合)
2. 構造形式による違い:ラーメン構造と壁式構造
建物の構造を支える仕組み(構造形式)にも種類があり、代表的なものが「ラーメン構造」と「壁式構造」です。
ラーメン構造 | 壁式構造 | |
---|---|---|
特徴 | ドイツ語で「額縁」を意味し、柱と梁(はり)を強固に接合して骨組みを作り、建物を支える構造です。 | 柱や梁の代わりに、鉄筋コンクリート製の壁(耐力壁)で建物を支える構造です。 |
メリット | 柱と梁で支えるため、壁の位置や窓などの開口部を比較的自由に設計でき、間取り変更やリフォームがしやすいです。多くの中高層マンションで採用されています。 | 柱や梁が室内に出ないので、部屋の隅まですっきり使え、家具の配置がしやすいです。構造的に壁が厚くなるため、耐震性や遮音性が高い傾向にあります。ラーメン構造に比べ、建築コストを抑えやすいです。 |
デメリット | 部屋の中に柱や梁の出っ張り(デッドスペース)ができてしまうことがあります。 | 壁で支えているため、大きな窓などの開口部を設けにくく、間取りの変更も困難です。建築基準法により、原則として5階建て以下の低層マンションにしか採用できません。 |
3. 耐震性をさらに高める技術:耐震・制震・免震
建築基準法で定められた耐震基準(特に1981年6月以降の「新耐震基準」)を満たすことは大前提ですが、さらに安全性を高めるために「制震構造」や「免震構造」といった技術が採用されることがあります。
- 耐震構造: 柱や梁、壁などの強度を高めて、地震の揺れに「耐える」構造です。最も基本的な考え方で、多くの建物に採用されています。建物自体が揺れるため、上層階ほど揺れが大きくなり、家具の転倒などのリスクがあります。
- 制震構造: 建物内部にダンパーなどの「制震装置」を設置し、地震のエネルギーを吸収して揺れを「制御する」構造です。耐震構造に比べて建物の揺れを小さくでき、繰り返しの地震にも効果を発揮します。コストは耐震構造より高くなりますが、免震構造よりは抑えられます。
- 免震構造: 建物と基礎(地盤)の間に積層ゴムやダンパーなどの「免震装置」を設置し、地震の揺れが建物に直接伝わるのを「免れる(少なくする)」構造です。建物自体の揺れを大幅に低減できるため、室内の被害を最も抑える効果が期待できます。ただし、導入コストは最も高くなります。
また、「耐震等級」という指標もあり、等級1(建築基準法レベル)から等級3(等級1の1.5倍の耐力)まで3段階で示され、数字が大きいほど耐震性が高くなります。
まとめ:自分に合ったマンション構造の選び方
ここまで見てきたように、マンションの構造にはそれぞれ一長一短があります。どの構造がベストかは、個人のライフスタイル、予算、そして何を最も重視するかによって異なります。
- 安全性を最優先するなら: SRC造、またはRC造で免震・制震構造を採用したマンションが有力候補です。耐震等級もチェックしましょう。
- コストと性能のバランス重視なら: RC造が標準的な選択肢となります。ラーメン構造か壁式構造かも確認しましょう。
- 初期費用を抑えたい、デザイン性を重視するなら: S造も選択肢に入りますが、遮音性や将来的な資産価値も考慮に入れる必要があります。
- 静かな住環境を求めるなら: 遮音性の高いRC造やSRC造、壁式構造が有利です。
- 将来的なリフォームや売却を考えるなら: 間取り変更のしやすいラーメン構造のRC造やSRC造が有利な場合があります。
マンションを選ぶ際は、必ず「新耐震基準」(1981年6月1日以降の建築確認)を満たしているかを確認しましょう。その上で、今回解説した構造の種類(RC/SRC/S)、構造形式(ラーメン/壁式)、耐震技術(耐震/制震/免震)といった情報を参考に、ご自身の優先順位と照らし合わせて検討することが重要です。
不明な点や、個別の物件について詳しく知りたい場合は、信頼できる不動産会社の担当者に相談することをおすすめします。
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