区分マンションとは?分譲マンションとの違いと投資の注意点

不動産投資や資産運用について調べ始めると、「区分マンション」という言葉を目にする機会が増えます。「なんとなくマンションの一室を買うことだろう」とは想像できても、「分譲マンションとは何が違うの?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。

特に不動産投資として検討する場合、この「区分」という言葉が持つ法的な意味や、投資対象としてのメリット・注意点を正確に理解しておくことは、失敗を避けるために重要です。

この記事では、「区分マンションとは何か?」という基本的な定義から、「分譲マンション」との違い、さらに投資対象として見た場合のメリット、そして知っておくべき注意点やリスクについて詳しく解説します!

目次

「区分マンション」とは?まず基本的な意味と「分譲マンション」との違いを解説

まず、基本的な意味と「分譲マンション」との違いについて解説します。

「区分マンション」と「分譲マンション」の違い

「区分マンション」と「分譲マンション」は、指し示すモノ(建物)としては基本的に同じものです。

どちらも「一棟の建物が、複数の独立した部屋(住戸)に分かれており、その部屋ごとに所有者が異なる(または、個別に売買できる)マンション」を指しています。

では、なぜ二つの呼び方が存在するのでしょうか?それは、何に着目した言葉であるかが異なるためです。

「区分マンション」とは?

「区分マンション」という呼び方は、主に法律や権利関係に着目した言葉です。

日本では、マンションのような一つの建物を複数人で分けて所有する際のルールを定めた「建物の区分所有等に関する法律(通称:区分所有法)」という法律があります。

この法律に基づき、

  1. 専有部分
    • 所有者が独立して所有権を持つ「部屋(住戸)そのもの」
  2. 共用部分
    • 居住者全員で共有する「廊下、階段、エントランス、エレベーター」など

この二つが明確に区別されています。

つまり「区分マンション」とは、「区分所有法」に基づいて、所有権が「区分」されている(分けられている)マンション、という意味合いが強い用語です。この「区分所有権」を持つ人のことを「区分所有者」と呼びます。

「分譲マンション」とは?

一方、「分譲マンション」という言葉は、主に販売形態に着目した言葉です。

「分譲」とは、「分割して譲渡(販売)する」という意味です。不動産デベロッパーなどが一棟のマンションを建設し、それを一室(一戸)ずつ購入希望者に販売する形態を「分譲」と呼びます。

私たちが普段、「新築分譲マンション購入」といった使い方をするのは、この販売形態に着目しているためです。賃貸マンションが一棟丸ごと一人のオーナー(または一企業)によって所有・運営されているのに対し、分譲マンションは部屋ごとに所有者が異なるのが一般的です。

なぜ不動産投資で「区分マンション」と呼ばれるのか?

では、なぜ不動産投資の世界では「分譲マンション」ではなく、わざわざ「区分マンション」という言葉がよく使われるのでしょうか。

それは、不動産投資の手法には大きく分けて「一棟投資」と「区分投資」の2種類があるためです。

  • 一棟投資
    • アパートやマンションを一棟丸ごと購入し、経営する手法。
  • 区分投資
    • マンションの一室(区分所有権)を購入し、賃貸に出す手法。

このように、一棟(丸ごと)」と対比させるために、「一室単位」の投資を指す言葉として、法律的な所有形態を示す「区分マンション(投資)」という用語が好んで使われるのです。

不動産投資としての「区分マンション」とは?4つのメリットを解説

「区分マンションとは何か」が整理できたところで、次に不動産投資の対象として見た場合の「区分マンション投資」のメリットについて解説します。

①一棟投資と比べて、比較的少額の資金から始められる

区分マンション投資のメリットは、一棟投資に比べて初期費用(物件価格+諸費用)を抑えられることです。

一棟アパートや一棟マンションを丸ごと購入する場合、都内であれば数千万円〜数億円の資金が必要になるケースも珍しくありません。一方、区分マンションであれば、立地や築年数、間取り(ワンルームなど)によっては、数百万円〜数千万円台から物件を探すことが可能です。

金融機関からのローン(融資)を利用する際も、物件価格が低い分、借入額も少なくて済むため、不動産投資の初心者や、まずは少額からスタートしたいと考える人にとって、比較的始めやすい手法の一つと言えます。

②物件の流動性が高く、売却しやすい

流動性の高さもメリットの一つです。

不動産は一般的に現金化(売却)するまでに時間がかかる資産ですが、区分マンションは一棟物件に比べて価格帯が低いため、買い手の層が広くなります。投資家だけでなく、実際に自分で住むための「実需層(マイホームとして探す人)」もターゲットになるためです。

一棟物件は価格が高額になるため、買い手は資金力のある投資家や不動産会社に限られがちです。その点、区分マンションは「売りたい」と思ったタイミングで比較的スムーズに買い手を見つけやすく、一棟物件と比較して買い手の層が広く、比較的売却しやすい傾向があると言えます。

③駅近など「好立地」の物件を選びやすい

賃貸経営において、空室リスクを減らすために重要な要素の一つが「立地」です。

一棟アパートや一棟マンションを利便性の高い「都心・駅近」エリアで探そうとすると、当然ながら価格は非常に高額になります。しかし、区分マンションであれば、同じ「都心・駅近」エリアでも一室単位で購入できるため、一棟では手が出なかったような好立地の物件を投資対象として選ぶことが可能です。

一般的に賃貸需要が見込める人気エリアの物件を狙いやすい点は、区分マンション投資ならではの強みです。

④複数の物件に投資しリスク分散が可能

区分マンション投資は、リスク分散の観点からもメリットがあります。

例えば、1億円の自己資金がある場合、一棟マンションを1つ購入するのではなく、2,000万円の中古区分マンションをエリアの異なる5箇所(例:A駅、B駅、C市…)で購入する、といった戦略が取れます。

仮にA駅の物件が空室になっても、他の4物件が家賃を生んでいれば、収入がゼロになることはありません。また、特定のエリアで災害があったり、大学の移転などで賃貸需要が急落したりした場合のリスクも、エリアを分散させることで軽減できます。

「区分マンション」とは言え「儲からない」?

メリットが多い一方で、インターネット上では「区分マンション投資は儲からない」「やめとけ」といったネガティブな意見も目にします。それはなぜでしょうか。

「区分マンション(区分所有)」であるがゆえの、特有の注意点(デメリット)を正しく理解しておくことが、投資を成功に導くために重要です。

注意点1:空室になると家賃収入がゼロになるリスク

これは区分マンション投資の最大のリスクです。特に「一室だけ」を所有している場合、その部屋に入居者がいなければ、家賃収入は完全にゼロになります。

一棟アパート(例:10室)であれば、1室が空室になっても、他の9室が稼働していれば収入は90%維持されます。

しかし区分マンション(一室)の場合、空室期間中は収入がゼロにもかかわらず、後述する管理費・修繕積立金やローン返済は毎月出ていきます。この「0か100か」という収支の変動性は、精神的にも金銭的にも大きな負担となる可能性があります。

注意点2:毎月発生する「管理費・修繕積立金」の負担

区分マンションのオーナー(区分所有者)は、家賃収入の有無にかかわらず、毎月必ず「管理費」と「修繕積立金」を管理組合に支払う義務があります。

  • 管理費
    • エントランスの清掃、エレベーターの保守点検、共用部分の光熱費など、日常の管理に使われる費用。
  • 修繕積立金
    • 十数年に一度行われる外壁塗装、屋上防水などの大規模修繕のために積み立てる費用。

これらは賃貸経営における必要経費ですが、特に注意が必要なのは「修繕積立金は将来的に値上がりする可能性が非常に高い」という点です。

新築時は販売価格を安く見せるために修繕積立金が低く設定されているケースが多く、築年数が経過するにつれて(例:10年目、20年目)、当初の計画では資金が足りなくなり、積立金が大幅に値上げされることが珍しくありません。

購入時の利回りシミュレーションが、この値上がりによって崩れ、収支が赤字になるリスクも考慮する必要があります。

注意点3:区分所有ならではの「経営の自由度の低さ」

区分マンションは「区分所有法」に基づき、「専有部分(自分の部屋)」と「共用部分(みんなのもの)」が明確に分かれています。

オーナーと言えども、自由にできるのは「専有部分」のみです。廊下やエントランス、バルコニー、窓ガラスといった「共用部分」に関する変更(例:セキュリティ強化、リフォーム)は、自分の一存では一切できず、管理組合」の総会での決議(多数決)が必要になります。

例えば、「ペット可にして入居者を募集しやすくしたい」「空室対策のために、共用部に宅配ボックスを設置したい」と思っても、他の区分所有者の合意が得られなければ実行できません。このように、経営の自由度が低い点は大きなデメリットです。

注意点4:建物全体の老朽化と「建て替え」問題

建物が古くなれば、いずれ「建て替え」の問題が発生します。

しかし、区分マンションの建て替えは非常にハードルが高く、原則として「区分所有者及び議決権の各5分の4以上」の賛成が必要です。

一人でも強硬に反対する人がいたり、所有者と連絡がつかなかったりすると、建て替えは進みません。自分は「建て替えて資産価値を維持したい」と思っても、他の所有者が「追加の金銭的負担は嫌だ」と反対すれば、老朽化が進むマンションを持ち続けるしかない、という事態に陥る可能性があります。

注意点5:一棟投資と比べた融資(ローン)の条件

区分マンションは、一棟物件に比べて金融機関からの「担保評価」が低くなりがちです。

不動産投資ローンにおいて、金融機関が重視するのは「土地」の価値です。一棟アパート・マンションであれば土地も丸ごと所有権を持ちますが、区分マンションの場合、所有する土地の権利は、全戸数で割った「敷地権」というわずかな持ち分しかありません。

そのため、担保価値が低いと判断されやすく、一棟投資に比べてローン審査が厳しくなったり、借入できる金額が少なくなったり、金利が高めに設定されたりする傾向があります。

まとめ

最後に、本記事の要点をまとめます。「区分マンションとは何か」を正しく理解し、ご自身の投資目的に合っているか冷静に判断しましょう。

区分マンション投資が向いている人・向いていない人の特徴

【向いている人】

  • 不動産投資の第一歩として、比較的少額から始めたい人。
  • 都心や駅近など、資産価値が安定しやすい好立地を選びたい人。
  • 管理の手間をできるだけ軽減し、副業として運用したい人。

【向いていない人】

  • 空室時の収入ゼロリスク(特に一室のみの場合)を許容できない人。
  • 管理費や修繕積立金の値上がりリスクを考慮せず、高い利回りだけを求める人。
  • 管理組合の意向に左右されず、自分の裁量でリフォームや経営判断をしたい人。
  • 将来の建て替えなども含め、長期間にわたり主体的に不動産経営をしたい人。

不動産投資は目的とリスク許容度に合わせた選択が重要

「区分マンション」と「分譲マンション」は、基本的に同じものを指しますが、不動産投資の世界では「一棟」と対比する「一室単位の投資」として「区分」という言葉が使われます。

区分マンション投資は、少額から始められ、流動性も高いという大きなメリットがありますが、それは同時に「区分所有」であるがゆえの「収入ゼロリスク」や「経営の自由度の低さ」といったデメリットと表裏一体です。

「区分マンションとは何か」を正しく理解し、メリットだけでなく、管理費・修繕積立金の値上がりや管理組合の存在といったリスクも必ずシミュレーションした上で、ご自身の目的やリスク許容度に合った投資手法を選択してください。

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