オーナーチェンジ物件とは?仕組みとメリット・デメリットを解説

「オーナーチェンジ物件」という言葉を目にして、「すぐ家賃収入が得られる」というメリットに惹かれつつも、「なぜ売るの?」「内見できないのは危険?」と不安に思っていませんか?

オーナーチェンジ物件は、不動産投資初心者にとって非常に魅力的ですが、その裏には知っておくべき特有のリスク(デメリット)も潜んでいます。

この記事では、「不動産投資をこれから始める20〜30代のあなた」のために、オーナーチェンジ物件の基本的な仕組みから、メリット、そして後悔しないためのデメリットや注意点までを、分かりやすく徹底解説します。

この記事を読めば、あなたがオーナーチェンジ物件を投資対象として選ぶべきかどうかの判断基準が明確になります。

目次

オーナーチェンジ物件とは?基本的な仕組みを解説

まずは、「オーナーチェンジ物件」がどのようなもので、通常の不動産売買と何が違うのか、その基本的な仕組みから理解していきましょう。

「オーナーチェンジ物件」の基本的な意味

オーナーチェンジ物件とは、その名の通り「オーナー(所有者)が変わる物件」のことです。大きな特徴は、入居者がいる状態(賃貸中)」のまま売買される点にあります。

例えば、あるマンションの一室をAさんが所有し、その部屋にBさんが賃貸契約を結んで住んでいるとします。この部屋をAさんがCさんに売却する場合、Bさんが住み続けている状態で、所有権だけがAさんからCさんに移転します。この取引がオーナーチェンジです。

購入したCさんは、その瞬間からBさんに対する「新しいオーナー(大家)」となり、Bさんが支払う家賃を受け取る権利を得ます。

通常の「空室物件」の売買との決定的な違い

通常の「空室物件」の売買とオーナーチェンジ物件の売買では、購入の目的と引き継ぐものが根本的に異なります。

  • 空室物件の売買
    • 目的
      • 買主が「自分で住む(居住用)」ことが一般的です。もちろん投資用に購入して新たに賃貸募集をかけるケースもあります。
    • 引き継ぐもの: 物件の「所有権」のみ。
  • オーナーチェンジ物件の売買
    • 目的
      • 買主は「家賃収入を得る(投資用)」ことが目的です。
    • 引き継ぐもの
      • 物件の「所有権」+ 前オーナーの「貸主としての地位」。

この「貸主としての地位」を引き継ぐという点が、オーナーチェンジ物件を理解する上で重要なポイントです。

買主が引き継ぐ「貸主の地位」とは?

「貸主の地位を引き継ぐ」とは、単に家賃をもらえる権利だけでなく、前オーナーが結んだ賃貸借契約に関する「権利」と「義務」をすべてそのまま引き継ぐことを意味します。

<引き継ぐ権利>

  • 家賃を受け取る権利
    • 買主は、所有権移転日(通常は決済日)以降の家賃を、入居者から受け取ることができます。

<引き継ぐ義務>

  • 義務1:賃貸借契約の継続
    前オーナーと入居者が結んだ契約内容(家賃、契約期間、特約など)を、新しいオーナーである買主は遵守しなければなりません。「オーナーが変わったから家賃を上げます」「出ていってください」といった一方的な要求は原則としてできません。
  • 義務2:敷金の返還義務
    入居者が入居時に前オーナーに預けた「敷金」は、買主に引き継がれます。具体的には、売買代金とは別に、売主(前オーナー)から買主(新オーナー)へ敷金相当額が渡されます。そして将来、その入居者が退去する際には、買主が(預かった敷金から原状回復費用などを差し引いて)返還する義務を負います。
  • 義務3:修繕義務
    「給湯器が壊れた」「エアコンが動かない」など、物件の設備に不具合が生じた場合、オーナーとして修繕対応する義務も引き継ぎます。

なぜ売るの?オーナーチェンジ物件が市場に出る理由

「すでに入居者がいて家賃収入もあるのに、なぜわざわざ売るの?」と疑問に思うかもしれません。これには、ポジティブな理由とネガティブな理由の両方があります。

<ポジティブな売却理由>

  1. 資産の組み換え(ポートフォリオの見直し)
    「ワンルームを複数持つより、ファミリータイプに買い替えたい」「都心から地方の高利回り物件にシフトしたい」など、不動産投資家が自身の資産戦略に基づき、物件を入れ替えるケースです。
  2. まとまった現金の確保
    相続が発生し「相続税の納税資金が必要」、あるいは「遺産分割のために現金化したい」という理由。また、事業資金など、別の目的でまとまった現金が必要になった場合も売却理由となります。
  3. 売却益の確定(キャピタルゲイン)
    購入時より不動産価格が上昇したタイミングで売却し、利益を確定させるケースです。

<ネガティブな売却理由(要注意)>

  1. 管理の手間・空室リスク
    「入居者対応や建物管理が面倒になった」「今後の空室リスクや家賃下落を懸念して、早めに手放したい」という理由です。
  2. 物件・入居者の問題
    「入居者が家賃を滞納しがち」「近隣とトラブルを起こしている」「建物に大きな修繕が必要になりそう」など、物件や入居者に何らかの問題を抱え、次のオーナーに引き継ぎたいというケースも残念ながら存在します。

なぜ売るのか、その理由を見極めることが、優良なオーナーチェンジ物件を選ぶ第一歩となります。

オーナーチェンジ物件を購入するメリット

オーナーチェンジ物件は、特に不動産投資の初心者にとって魅力的な側面が多くあります。主な4つのメリットを見ていきましょう。

購入後すぐに家賃収入が得られる

投資用物件を購入する大きな目的は「家賃収入(インカムゲイン)」を得ることです。

通常の空室物件(区分マンションやアパート)を購入した場合、まずリフォームを行い、その後、不動産会社に入居者募集を依頼し、入居者が決まって初めて家賃が発生します。購入から数ヶ月間、収入がゼロ(持ち出し)になることも珍しくありません。

一方、オーナーチェンジ物件はすでに入居者がいるため、物件の引き渡しを受けたその月(または翌月)からすぐに家賃収入が発生します。投資のスタートと同時にキャッシュフローが得られることは、資金計画上の利点の一つです。

入居者募集の手間とコストが不要

空室物件で入居者を探す場合、以下のような手間とコストがかかります。

  • 不動産会社への募集依頼
  • 広告料(AD)や仲介手数料の支払い(家賃の1〜2ヶ月分が相場)
  • 入居者が決まるまでの待機期間(空室ロス)
  • 入居審査などの事務手続き

オーナーチェンジ物件であれば、これらの手間やコストが一切かかりません。特に不動産投資が初めてで、「どうやって入居者を探せばいいかわからない」という方にとっては、スタート時のハードルが低いと言えるでしょう。

収益計画(利回り)が立てやすい

不動産投資の収益性を測る指標に「利回り」があります。

空室物件の場合、「このエリアなら家賃〇万円くらいで貸せるだろう」という「想定家賃」で利回りを計算します。しかし、想定通りに入居者が決まるとは限らず、相場より家賃を下げざるを得ないリスクもあります。

その点、オーナーチェンジ物件は、「現在いくらの家賃で貸しているか」という実績に基づいた家賃収入で利回りを計算できます。

  • (例)物件価格2,000万円、現在の月額家賃10万円
    • 年間家賃収入:10万円 × 12ヶ月 = 120万円
    • 表面利回り:120万円 ÷ 2,000万円 = 6.0%

このように、非常に現実的かつ具体的な収支計画(キャッシュフローシミュレーション)を立てることが可能です。ただし、現在の入居者が退去した後、同じ家賃で次の入居者が決まる保証はない(家賃が下落する)リスクについては、別途考慮が必要です。

居住用物件より割安な価格のケースも

同じエリア、同じ築年数、同じ間取りの物件でも、オーナーチェンジ物件は「空室」の物件に比べて割安な価格設定になっていることがあります。

なぜなら、空室物件は「自分で住みたい人(実需層)」と「投資したい人(投資家層)」の両方が購入検討者となりますが、オーナーチェンジ物件は「自分で住めない」ため、購入検討者が「投資家層」に限定されるからです。

購入検討者が投資家層に限定されるため、空室物件と比較して価格競争が起きにくい場合があります。また、「内見ができない」という特有のリスクがあることから、価格交渉が進めやすいケースも見られますが、価格設定は個別の状況に依存します。

知っておくべきデメリット

メリットの裏には、必ずデメリットが存在します。「危険」「後悔した」という声が聞かれるのも、これらのデメリットを軽視した結果かもしれません。購入前に必ず把握しておきましょう。

室内の内見(内覧)ができない

これがオーナーチェンジ物件における大きなデメリットであり、リスクです。

入居者が住んでいるため、売買契約の前に購入希望者が室内を直接確認することは原則としてできません外観や共用部(エントランス、廊下など)しか見ることができないのです。

そのため、以下のようなリスクを抱えることになります。

  • 室内の汚れや傷、破損(タバコのヤニ汚れ、ペットによる傷など)がどれほどか不明。
  • キッチン、浴室、給湯器などの設備がどれほど老朽化しているか不明。
  • (場合によっては)間取り図と異なるリフォームやDIYがされている可能性。

これらの状況は、現在の入居者が退去するまで分かりません。いざ退去後に室内を見たら、想定外の汚れや設備の故障が発覚し、高額なリフォーム費用や設備交換費用が発生して、収支計画が大きく狂ってしまう「後悔」のパターンです。

入居者を自分で選べない

オーナーチェンジ物件は、物件とセットで「現在の入居者」も引き継ぎます。買主は入居者を選べません。

もしその入居者が、以下のような「問題のある入居者」だった場合、そのリスクも丸ごと引き継ぐことになります。

  • 家賃を頻繁に滞納する
  • 夜間に騒音を出す、ゴミ出しのルールを守らないなど、近隣とトラブルを起こしている
  • 室内の使い方が極端に荒い

これらの情報は、売主や管理会社にヒアリング(聞き取り)することでしか確認できません。もし情報が隠されていた場合、購入直後から家賃滞納の督促や、近隣からのクレーム対応に追われる可能性があります。

住宅ローンが利用できない

マイホームを購入する際に利用する「住宅ローン」は、金利が非常に低く(変動金利なら1%以下も多い)、返済期間も長く設定できるのが特徴です。

しかし、住宅ローンはあくまで「契約者本人が住む(居住用)」ことが利用条件です。

オーナーチェンジ物件は「投資用」であるため、原則として住宅ローンを利用することはできません

購入するには、金融機関が提供する「不動産投資ローン(アパートローン)」を利用するか、自己資金(現金)で購入する必要があります。不動産投資ローンは、住宅ローンに比べて金利が比較的高く(1%台後半〜4%台など)、審査のハードル(個人の属性や物件の収益性)も高くなる傾向があります。

家賃設定が相場より低い可能性がある

特に、現在の入居者が10年、20年と長く住み続けている場合、入居当時の家賃設定のままになっていることがあります。

その結果、周辺の似たような物件の「現在の家賃相場」と比べて、著しく低い家賃設定になっているケースが少なくありません。

前述の通り、オーナー側の一方的な都合で家賃を値上げすることは法律上(借地借家法)非常に困難です。たとえ値上げ交渉ができたとしても、大幅な増額は期待できません。

周辺相場と比較して家賃が適正かを確認することが推奨されます。

売主の「契約不適合責任」が免責されるケースが多い

「契約不適合責任」とは、雨漏りやシロアリ、主要な設備の故障など、売買契約書に記載されていない重大な欠陥(瑕疵)が見つかった場合に、売主が買主に対して負う補修や賠償の責任のことです。

通常の居住用物件の売買(売主が個人の場合)では、引き渡しから2〜3ヶ月間はこの責任を負うのが一般的です。

しかし、オーナーチェンジ物件のような「投資用物件」の売買では、「お互い(売主も買主も)プロ(あるいは投資家)である」という前提から、この契約不適合責任を「一切免除(免責)」する特約が付されることが非常に多いです。

つまり、購入後に雨漏りが発覚しても、売主に修繕費用を請求できない可能性が高いのです。内見ができないリスクと相まって、買主が負うリスクはさらに大きくなります。

まとめ

オーナーチェンジ物件は、「購入後すぐに家賃収入が得られる」「入居者募集の手間がかからない」という点で、不動産投資のスタートアップに適した魅力的な手法です。

しかしその裏には、「内見ができない」「入居者を選べない」「住宅ローンが使えない」といった、通常の不動産購入にはない特有のリスクが数多く存在します。

オーナーチェンジ物件への投資を検討する際は、表面的な利回りだけでなく、レントロールや賃貸借契約書、管理状況といった情報を深く調査し、ご自身のリスク許容度を冷静に判断することが大切です。

オーナーチェンジ物件選びで失敗したくない方へ

オーナーチェンジ物件のリスクを正しく理解し、ご自身の資金計画やリスク許容度に合った物件を見つけるには、実績豊富な専門家への相談が不可欠です。

不動産インサイトナビでは、初心者の方の不動産投資ローンや、物件の収益性に関するご相談を無料で受け付けております。

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