売買物件でよく見る1SLDKとは?間取り図「S」の意味とメリット・デメリット

不動産の購入検討で「1SLDK」という間取り図を見て、「このSって何?」「2LDKと比べて購入価格や資産価値にどう影響するの?」と迷っていませんか?この記事は、不動産購入を考えているあなたに向けて、「S(サービスルーム・納戸)」がなぜ居室と表記されないのか、その建築基準法上の理由と、購入時・売却時に見落とせないメリット・デメリットをわかりやすく解説します!

さらに、1LDKや2LDKとの家賃や広さの違い、見落としがちなデメリット、そして「S」を収納や書斎、リモートワークスペースとして活用するメリットを具体的に紹介します。

目次

1SLDKとは?「S」の正体と間取り図の読み方

お部屋探しをしていると、1LDKや2DKといった見慣れた表記に混ざって「1SLDK」という間取りを見かけることがあります。LDKは分かるけれど「S」とは一体何なのか、まずはその基本的な定義から解き明かしていきましょう。

1SLDKの「S」は「サービスルーム」または「納戸(N)」

1SLDKとは、「1LDK(リビング・ダイニング・キッチン+居室1室)に、S(サービスルーム)が加わった間取り」のことを指します。

この「S」は「Service Room(サービスルーム)」の頭文字です。日本語でいう「納戸(なんど)」とほぼ同じ意味で使われるため、物件によっては「1LDK+N(納戸)」と表記されることもあります。

ほかにも「S」と同様の意味合いで以下のような表記が使われるケースがあります。

  • F(フリールーム)
    • 用途を限定しない自由な部屋という意味合いです。
  • DEN(デン)
    • 英語で「巣」や「隠れ家」を意味し、一般的には書斎や趣味の小部屋を指すことが多い表記です。

これらはすべて、「居室ではない、プラスアルファの空間」という共通点を持っています。

なぜ「居室(洋室)」と表記されない?建築基準法との関係

では、なぜわざわざ「S」と表記し、「2LDK(洋室2部屋+LDK)」と表記しないのでしょうか?

ユーザーの方が疑問に思うこの点には、「建築基準法」が大きく関係しています。建築基準法では、人が継続的に使用する部屋を「居室」と定義しており、居室として認めるためには、主に以下の2つの基準をクリアする必要があります。

  1. 採光
    • 部屋の床面積に対して、一定の割合以上の大きさの窓(採光に有効な窓)がなければならない。(例:住宅の場合、床面積の1/7以上)
  2. 換気
    • 換気のための窓や開口部、または換気設備が基準を満たしている必要がある。(例:窓の開口部の面積が床面積の1/20以上)

つまり、間取り図上で「S」や「納戸」と表記されている部屋は、「窓が小さい」「窓がまったくない」などの理由で、この建築基準法上の「居室」の基準を満たしていない空間なのです。

不動産会社は、「不動産の表示に関する公正競争規約(表示規約)」というルールに基づき、基準を満たさない部屋を「洋室」や「寝室」と表記できず、「サービスルーム」や「納戸」として区別して広告に掲載しています。

1SLDKと1LDK、2LDKの決定的な違いとは?

この法的な背景を踏まえると、1LDKや2LDKとの違いは明確です。

  • 1LDKとの違い
    「居室1部屋+LDK」に加えて、「+αの空間(S)があるかないか」が違いです。当然、Sがある分、1SLDKのほうが専有面積は広くなります。
  • 2LDKとの違い
    混同しやすいポイントです。
    • 1SLDK: 「居室」は1部屋 +「S(居室ではない空間)」が1部屋 + LDK
    • 2LDK: 「居室」が2部屋 + LDK

法的な定義上、「居室」として認められた部屋が1つなのか2つなのか、という決定的な違いがあります。ただし、次の項目で触れるように、この「S」が実質的に居室と変わらない広さを持っているケースもあるのが、1SLDKの面白いところです。

サービスルームの広さはどれくらい?一般的なケース

「S」と聞くと、押入れのような狭い物置を想像するかもしれませんが、その広さは物件によって驚くほど差があります。

確かに、廊下の突き当たりにある1畳ほどの小さな収納スペースが「S」とされている場合もあります。しかし、売買物件で「1SLDK」として紹介される場合、一般的には2畳から5畳程度の広さを持つことが多いです。

注目すべきは、中には6畳近い広さがあり、窓も(小さいながら)付いているような、「S」と呼ぶのが不思議なほど立派な空間も存在することです。

これは、例えば窓の大きさが基準よりわずかに足りなかっただけで、広さや形はまったく問題ないケースです。広さがある場合、収納だけでなく書斎など多目的な空間として活用でき、通常の2LDKよりも家賃が抑えられているケースもあります。その物件がご自身のライフスタイルに合致すれば、魅力的な選択肢となり得ます。

1SLDKのメリットと活用方法をご紹介!

法的な制約がある「S」ですが、それを理解した上で選ぶのであれば、1SLDKには他の間取りにはない大きなメリットがあります。特に現代のライフスタイルにおいて、その「+αの空間」は非常に魅力的です。

収納スペースを確保できる

本来の用途が「納戸」であるため、収納力は抜群です。 1LDKではクローゼットが手狭で、LDKや寝室に収納家具を置かざるを得ないことも多いですが、1SLDKならその心配がありません。

  • 衣替えの衣類や布団
  • 扇風機やヒーターなどの季節家電
  • スーツケースやゴルフバッグ、アウトドア用品
  • 趣味のコレクションや本

こうした「普段は使わないけれど場所を取るモノ」をすべて「S」に集約できます。その結果、LDKや寝室といった生活空間をスッキリと広く保つことができるのです。

ライフスタイルに合わせた多様な使い方ができる

「S」は、収納だけに留まらない「柔軟性の高い空間」です。 一人暮らしでも二人暮らしでも、住む人のライフスタイルやライフステージの変化に合わせて、多様な使い方ができるのが大きな強みです。

  • 一人暮らし:「寝室」+「S(書斎)」+「LDK」
  • 二人暮らし:「寝室」+「S(共有WIC)」+「LDK」
  • 子供が小さい時期:「寝室」+「S(子供の遊び場)」+「LDK」

このように、生活の変化に応じて使い方を変えられる「余白(あそび)」のある間取りと言えます。

価格の優位性と将来性

不動産売買の観点でも、1SLDKには特有のメリットがあります。

  • 購入時のメリット(価格): 賃貸と同様に、実質的な部屋数(2部屋)を持つ2LDKと比較して、新築・中古ともに価格が割安に設定されている場合があります。特に中古市場では、同じ専有面積の2LDKより安価として狙い目になることがあります。
  • 購入・売却時のメリット(将来性・柔軟性): 1SLDKの「S」は、将来のリノベーションの「余白」として大きな可能性を秘めています。
    • 例1:隣の寝室とつなげて、ウォークインクローゼット(WIC)を備えた広い主寝室にする。
    • 例2:壁やドアをしっかり造作し、防音性を高めた「完全個室の書斎」や「配信ルーム」にする。
    • 売却時にも「リノベーション素地(ベース)として面白い物件」として、特定のニーズを持つ層(クリエイター、リモートワーカー)に強く訴求できる可能性があります。

【S活用例①】書斎・リモートワークスペースとして

現代の働き方にフィットする活用法が「書斎・リモートワークスペース」です。

LDKでリモートワークをしていると、仕事とプライベートの区別がつきにくかったり、生活音や家族の気配が気になったりしがちです。

独立した「S」の空間なら、仕事や勉強に集中できる環境を整えられます。また、Web会議の際に「生活感のある背景が映り込む」という悩みも、Sをワークスペース専用にすることで解決できます。

【S活用例②】趣味の部屋・シアタールームとして

「S」は、採光基準を満たしていない(=窓が小さい、または無い)ことが多いです。これを逆手に取った活用法が、趣味の部屋です。

例えば、直射日光を避けたいコレクション(本、フィギュア、ワインなど)を保管・陳列する部屋として最適です。

また、窓がないか小さければ外光を遮断しやすいため、「シアタールーム」としてプロジェクターを設置し、映画や音楽鑑賞に没頭する空間にするのも人気です。

ただし、シアタールームとして活用する場合、サービスルームは防音構造ではないことが多いため、音量管理や防音対策について、物件の構造や規約を確認し、近隣への配慮が必要です。

1SLDKのデメリット!契約前に知るべき注意点

メリットの多い1SLDKですが、法的な基準を満たしていないがゆえのデメリットも確実に存在します。これを知らずに契約すると「こんなはずじゃなかった」と後悔する大きな要因になります。

採光や換気が不十分な場合がある

「居室」の基準を満たしていない大きな理由が、採光と換気です。

物件によっては、「S」には窓が一切ないケースも珍しくありません。窓があっても、開閉できないFIX窓であったり、共用廊下側のごく小さな窓(換気用)だけであったりします。

窓がない、または換気が不十分な部屋は、空気がよどみやすく、湿気がこもりやすい傾向にあります。特に北側の「S」などは、対策を怠ると結露やカビの発生源になりかねません。寝室や書斎として長時間過ごすことを考えている場合は、24時間換気システムの有無や空気清浄機の設置などを検討する必要があります。

エアコン設置不可の可能性が高く、生活に影響を及ぼす

これが1SLDKを選ぶ上で、重要なチェックポイントです。

「S」は居室として設計されていないため、エアコンを設置するための設備(スリーブと呼ばれる壁の配管穴や、専用のコンセント)が用意されていないケースが非常に多いのです。

エアコンが設置できなければ、いくら広さが6畳あっても、夏場や冬場にその部屋で快適に過ごすことは困難です。寝室や書斎として使おうと考えていた場合、計画が根本から崩れてしまいます。

「窓があるから窓用エアコンを」と考えるかもしれませんが、窓の形状やサイズ、あるいはマンションの規約で設置が禁止されていることもあります。冷風機なども局所的な冷却しかできず、根本的な解決にはなりにくいのが実情です。

コンセントやテレビ・ネット端子がないことも

エアコン以前の問題として、壁のコンセントが極端に少ない、あるいは照明用の1口しかない、というケースもあります。

書斎としてPCやデスクライト、プリンターを使おうにも、タコ足配線だらけになってしまっては不便ですし、危険も伴います。

また、当然ながらテレビアンテナ端子やLANポート(ネット回線)、電話回線などが備え付けられていることは稀です。寝室としてテレビを置きたい、ワークスペースとして有線LANを使いたい、といった希望がある場合は、他の部屋から延長ケーブルやWi-Fi中継機などで対応する工夫が必要になります。

資産価値とリノベの制約

不動産売買の観点では、Sの存在がデメリットとして働く側面もあります。

  • 購入時のデメリット(資産価値)
    • 「S」は法的に「居室」ではないため、不動産としての資産価値評価において、「居室2部屋(2LDK)」として評価されない可能性があります。金融機関によっては、住宅ローンの担保評価額にわずかに影響する場合もゼロではありません。
  • 購入時のデメリット(リノベーションの制約)
    • メリットとしてリノベーションの柔軟性を挙げましたが、制約もあります。
    • 構造壁の存在: 「S」と隣室をつなげて広い空間にしようと考えても、その間の壁がコンクリートの構造壁(耐力壁)だった場合、取り壊すことはできません。内見時には、壁の材質(叩いてみる、不動産会社に確認する)もチェックが必要です。
    • エアコン設置の絶望: 前述の通り、エアコンスリーブがなければ、後から設置するのは(分譲マンションでは)ほぼ不可能です。
  • 売却時のデメリット:将来物件を売却する際、「居室が2部屋」を必須条件とするファミリー層などからは、検討の土台から外されてしまう可能性があります。「2LDK」で探している人の検索に引っかからなかったり、内見で「Sは居室として使えない」と判断され敬遠されたりするリスクが伴います。

まとめ

1SLDKとは「使い方は自分次第」な可能性のある間取り

1SLDKとは、建築基準法上の「居室」基準(採光・換気)を満たさない「S(サービスルーム・納戸)」がついた間取りです。

法的な制約からエアコンやコンセントが無いといったデメリットもありますが、それを理解し、工夫次第で活用できるならば、これほど可能性に満ちた空間はありません。

2LDKより価格を抑えつつ、リモートワークスペースや大型収納、趣味の部屋など、ライフスタイルを豊かにする「+αの空間」を手に入れられるのが1SLDKの大きな魅力です。

メリット・デメリットを理解し、内見で「S」の質を見極めよう

この記事で解説した通り、1SLDKは物件ごとの「S」のコンディションによる個体差(当たり外れ)が非常に大きい間取りです。

間取り図の「1SLDK」という表記だけで判断せず、必ず現地に足を運び、あなたの目で「Sの質」を見極めてください。

  • エアコンは設置可能か?(スリーブとコンセント)
  • コンセントの数と位置は十分か?
  • 換気はできそうか?(窓や換気扇)

この3点を内見でしっかりチェックし、「これなら使える!」と確信できれば、その1SLDKはあなたの暮らしを格段に快適にする、パートナーになってくれるはず!

「記事を読んで1SLDKのメリット・デメリットは分かった。でも、今見ているこの物件の『S』は、本当に自分の使い方(書斎や寝室)に合うんだろうか?」

と一歩踏み込んだ不安がある方は、一度無料相談してみませんか? その間取り図の「S」が、あなたのライフスタイル(リモートワーク、趣味、収納量など)に本当に適しているか、内見で後悔しないための具体的なチェックポイントについて、無料の個別相談を受け付けています!

シェアはこちら
  • URLをコピーしました!
目次