不動産の媒介とは?一般・専任の違いと失敗しない契約の選び方を解説

不動産売却の際、必ず耳にする「媒介(ばいかい)」。「仲介とは違うの?」「自分に不利な契約じゃない?」と不安に感じていませんか?実は、この「媒介契約」の選び方こそが、スムーズな売却と失敗のリスクを分けるポイントです。

本記事では、専門用語である「媒介」の意味を初心者にもわかりやすく解説。さらに、3つの契約形態(一般・専任・専属専任)の違いを比較し、あなたの状況に合わせた「失敗しない選び方」を伝授します。

読み終える頃には、不動産会社の営業トークに惑わされず、自信を持って最適な契約を選択できるようになるでしょう。納得のいく売却活動をスタートさせるためのバイブルとしてご活用ください。

目次

不動産用語の「媒介」とは?仲介との違いや基礎知識

物件資料や契約書でよく見る「取引態様:媒介」という文字。まずは、この言葉の正体と、なぜ契約が必要なのかという基本をクリアにしていきましょう。

「媒介」と「仲介」の意味は実務上同じ

結論から言うと、「媒介」と「仲介」は同じ意味だと考えて問題ありません。

  • 媒介(ばいかい)
    • 宅地建物取引業法(宅建業法)などの法律で使われる正式名称。
  • 仲介(ちゅうかい)
    • 一般的なビジネスや日常会話で使われる名称。

どちらも「売主と買主の間に入り、契約を成立させる役割」を指します。法律上の書類(重要事項説明書など)では「媒介」と記載する必要がありますが、営業マンとの会話では「仲介」と言われることがほとんどです。「媒介と言われたから特別な手数料がかかる」といったことは一切ありませんのでご安心ください。

媒介契約が不動産売買で必要な理由

なぜわざわざ「媒介契約書」を取り交わす必要があるのでしょうか?それは、「言った言わない」のトラブルを防ぐためです。

かつては口約束で依頼を受けることもありましたが、「依頼した販売価格と違う」「約束していた広告が出されていない」「いつの間にか手数料の話が変わっている」といったトラブルが絶えませんでした。

現在では宅建業法により、不動産会社は依頼を受けると遅滞なく媒介契約書を作成し、依頼者に交付することが義務付けられています。

契約書には、売出し価格、仲介手数料の額、契約期間、活動内容などが明記され、売主を守るための重要な役割を果たしています。

媒介業務に含まれる具体的なサービス内容

媒介契約を結ぶと、不動産会社は具体的に以下のような業務を行います。

  • 物件調査・価格査定
    • 物件の価値を算出し、売り出し価格を提案。
  • 販売活動
    • 不動産ポータルサイト(SUUMOやHOME’Sなど)への掲載、チラシ配布。
  • 購入希望者の対応
    • 問い合わせ対応や内覧(物件見学)の案内。
  • 条件交渉
    • 価格や引渡し時期などの調整。
  • 重要事項説明・契約締結
    • 法的な書類作成と契約手続きのサポート。
  • 引渡し・決済
    • 残代金の授受や鍵の引渡しの立ち会い。

つまり、媒介とは単に相手を紹介するだけでなく、安全な取引を完了させるためのトータルサポートなのです。

媒介契約は3種類!一般・専任・専属専任の違いを徹底比較

媒介契約には「一般媒介」「専任媒介」「専属専任媒介」の3種類があり、それぞれ自由度や拘束力、不動産会社の義務が異なります。

3つの媒介契約の違い一覧表(レインズ・報告義務など)

まずは以下の比較表で全体像を把握しましょう。

項目一般媒介契約専任媒介契約専属専任媒介契約
他社への依頼(複数社OK)不可(1社のみ)不可(1社のみ)
自己発見取引(親戚や知人に自分で売る)不可(必ず仲介を通す)
契約期間法的制限なし(行政指導では3ヶ月)3ヶ月以内3ヶ月以内
レインズ登録義務
(不動産流通機構への登録)
義務なし7日以内に登録5日以内に登録
売主への報告義務義務なし2週間に1回以上1週間に1回以上

レインズ(REINS): 全国の不動産会社が情報を共有するネットワークシステム。登録されると全国の不動産会社があなたの物件情報を閲覧でき、早期売却につながりやすくなります。

一般媒介契約の特徴(メリット・デメリット)

【特徴】

唯一、複数の不動産会社に同時に依頼できる契約です。「A社、B社、C社すべてに声をかけ、買い手を見つけてくれた会社に手数料を払う」という競争スタイルです。

  • メリット
    • 人気エリアなら各社が競って販売してくれるため、早期売却や高値売却が期待できる。
    • 囲い込み(情報を隠されること)のリスクが低い。
  • デメリット
    • 不動産会社にとっては「頑張っても他社で決まればタダ働き」になるため、広告費をかけにくく、優先順位が下がりやすい。
    • 窓口が複数になるため、連絡対応が大変。

専任媒介契約の特徴(メリット・デメリット)

【特徴】

依頼できるのは1社のみですが、自分で買い手を見つけた場合(自己発見取引)は、仲介手数料を払わずに直接取引が可能です。

  • メリット
    • 窓口が1つなので連絡の手間が少ない。
    • 不動産会社は「売れれば確実に自社の利益になる」ため、広告費をかけて熱心に販売活動をしてくれる。
    • 2週間に1回の報告義務があり、状況を把握しやすい。
  • デメリット
    • 1社の実力に依存するため、会社選びを間違えると売れ残る。
    • 情報を隠蔽する「囲い込み」のリスクがある。

※自己発見取引の場合は、仲介手数料は発生しませんが、契約約款に基づきそれまでの活動にかかった実費(広告費等)を請求されるケースがありますので、契約書をよく確認しましょう。

専属専任媒介契約の特徴(メリット・デメリット)

【特徴】

専任媒介よりもさらに縛りがきつい契約です。大きな違いは、自分で買い手(親戚や知人など)を見つけても、必ずその不動産会社を介して契約し、手数料を払わなければならない点です。

  • メリット
    • 報告義務が「週に1回以上」と手厚い。
    • 不動産会社にとっては独占的な契約であるため、手厚いサービス(建物検査保証や買取保証など)が付帯することが多い。
  • デメリット
    • 完全に1社に命運を託すことになる。
    • 自己発見取引が禁止されており、融通が利かない。

【状況別】あなたに合う媒介契約の選び方は?失敗しない判断基準

「結局、どれを選べばいいの?」という疑問に対し、物件の特徴やあなたの希望に合わせた「最適解」を提案します。

人気エリアや好条件の物件なら「一般媒介」

都心の駅近マンションや、人気学区の戸建てなど、「放っておいても売れそうな物件」を持っている場合は、一般媒介が選択肢になり得ます。

複数の会社に「ウチならもっと高く売れますよ」と競争させることで、相場以上の価格を引き出せる可能性があるからです。逆に、郊外や築古物件で一般媒介を選ぶと、どの会社も本気にならず「塩漬け」になるリスクがあるため注意が必要です。

信頼できる担当者とじっくり売りたいなら「専任媒介」

多くの売主にとって、バランスが良くおすすめなのが「専任媒介」です。

  • 窓口を一本化して手間を減らしたい。
  • 信頼できる営業マンと二人三脚で販売戦略(価格変更のタイミングなど)を練りたい。
  • もし親戚や友人が買ってくれることになったら、仲介手数料なしで契約したい。

このような希望がある場合、専任媒介を選びましょう。大手から地域密着型まで、多くの不動産会社がこの形式を推奨しています。

遠方の物件や売却を急ぐなら「専属専任媒介」

  • 実家を相続したが、遠方に住んでいて頻繁に現地に行けない。
  • 転勤や住み替えの期限が決まっており、とにかく早く売りたい。

こういったケースでは、報告頻度が高く、業者側の責任感も強い「専属専任媒介」が適しています。特に「3ヶ月以内に売れなければ業者が買い取る」といった買取保証を利用する場合は、この契約が必須条件になることが多いです。

【注意】「とりあえず専任」は危険?安易な契約の落とし穴

不動産会社は自社の利益を確保するため、「専任(または専属専任)で任せてください!一般だと他社さんは真剣にやりませんよ」と強く勧誘してきます。

その言葉を鵜呑みにせず、「自分の物件は競争力があるか?」「この担当者は本当に信頼できるか?」を冷静に見極めてください。

迷った場合は、最初は「一般媒介」で様子を見て、反応が悪ければ信頼できる1社に絞って「専任」に切り替えるという方法も可能です。

媒介契約に関するお金の話!仲介手数料と費用の仕組み

「専任だと手数料が高くなるのでは?」と心配される方がいますが、費用のルールは明確です。

媒介契約の種類で仲介手数料は変わらない

一般、専任、専属専任のどの契約を選んでも、仲介手数料の上限額は同じです。

法律で定められた上限額(速算式)は以下の通りです。

仲介手数料の上限 = 売買価格3% + 6万円 + 消費税

※上記は、売買価格が400万円を超える場合の速算式です。

また、仲介手数料は「成功報酬」です。契約期間中に売却が成立しなかった場合、原則として手数料は1円も発生しません。

契約締結時に費用はかかる?無料の範囲とは

媒介契約を結ぶこと自体にお金はかかりません。

通常の販売活動(ネット掲載、チラシ作成、現地看板など)にかかる費用は、すべて不動産会社の負担(仲介手数料に含まれる経費)です。

ただし、例外があります。売主側が「特別な広告」を依頼した場合(例:テレビCMを出してほしい、遠隔地で特別なイベントを開いてほしい等)は、実費を請求される可能性があります。通常の売却活動であれば、成約するまで持ち出しはゼロと考えて大丈夫です。

媒介契約を結ぶ前の注意点とよくあるトラブル対策

最後に、契約後に後悔しないための防衛策をお伝えします。ここを知っているだけで、悪質な業者を避けることができます。

「囲い込み」とは?専任媒介のリスク

専任・専属専任契約の大きなリスクが「囲い込み」です。

これは、不動産会社が売主と買主の両方から仲介手数料をもらう(両手仲介)ために、他社から「その物件を買いたいお客さんがいるのですが」と問い合わせがあっても、「商談中です」と嘘をついて断ってしまう行為です。

これをされると、売主にとっては「売れるチャンスを逃す」「売却期間が長引く」という大きな不利益になります。

対策: 専任契約を結ぶ際は、レインズの「登録証明書」を必ず受け取り、自分の物件が「公開中」になっているか、レインズの確認画面で定期的にチェックしましょう。

契約期間中の解約は可能?違約金が発生するケース

「専任で契約したけれど、全然活動してくれないから解約したい」という場合、原則として契約期間の途中でも解約は可能です。

ただし、不動産会社に落ち度(報告義務違反など)がないのに、売主の都合で一方的に解約する場合、それまでにかかった広告費などの実費を請求される可能性があります。契約書には「解除に関する事項」が記載されていますので、判子を押す前によく確認してください。

契約更新や切り替えのタイミング

媒介契約の有効期間は、通常3ヶ月です。

3ヶ月経っても売れなかった場合、自動更新されるわけではありません。「更新して継続する」か「契約を終了する(他社に変える)」かを選べます。

このタイミングが、不動産会社を見直す絶好の機会です。「内覧件数が少なかった」「報告が適当だった」と感じたら、情に流されず、一般媒介に切り替えたり、他社へ乗り換えたりすることを検討しましょう。

まとめ

媒介契約は、不動産売却における「パートナー選びのルール決め」です。

  • 一般媒介
    • 物件の魅力に自信があり、競争させたい人向け。
  • 専任媒介
    • 窓口を一本化し、信頼関係で売りたい人向け。
  • 専属専任媒介
    • とにかく急ぎで、手厚い報告が欲しい人向け。

重要なのは、不動産会社の都合ではなく、「あなたの優先順位(価格・スピード・手間)」に合わせて選ぶことです。

まずは複数の会社に査定を依頼し、その際の提案内容や担当者の対応力を見てから、どの種類の契約を結ぶか決めても遅くはありません。

焦らず比較検討することが、納得のいく不動産売却への第一歩です。

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